インフレの今、所有している空き家物件は売却した方がよい?後悔しない判断基準

インフレの今、所有している空き家物件は売却した方がよい?後悔しない判断基準

著者紹介

代表取締役 武田 拓也

ファイナンシャルプランナー(AFP)/社会福祉士/高校教諭1種「福祉」
代表取締役 武田 拓也

元「高校教員」、現役「専門学校講師」
資産運用歴18年の実力派ファイナンシャルプランナー。
失敗談や成功例を実体験に基づいてお伝えしています。
社会福祉士としてNPO法人の理事や大学校友会の理事長など地域福祉にも取り組み中。
高校や大学、事業団体などで年100回以上の講演を実施。
趣味:人の話を聞くこと、資産運用(株式投資、不動産投資、投資信託、その他)

「空き家を売るべきか、それとも持ち続けるべきか」

親から相続した実家や、転勤・住み替えによって使わなくなった住宅を所有している方の中には、

「最近は不動産価格が上がっていると聞くから今が売り時なのだろうか?」

「インフレが進んでいるなら、不動産は持っていた方が有利なのでは?」

と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

近年、日本では物価上昇が続き、建築資材や人件費の高騰によって不動産価格も上昇傾向にあります。

そのため、「空き家を売却するなら今かもしれない」と考える方が増えています。

しかし、インフレだからといって、すべての空き家を売却すべきとは限りません。

重要なのは、「その空き家が将来価値を生み出す資産なのか、それとも維持費ばかりかかる負債なのか」を見極めることです。

今回は、インフレ時代における空き家の売却判断について、不動産の視点から分かりやすく解説します。

なぜインフレになると不動産価格が上がるのか?

まずはインフレと不動産の関係を理解しておきましょう。

インフレとは、モノやサービスの価格が上昇し、お金の価値が相対的に下がる現象です。

例えば、10年前に100円で買えた商品が120円や130円になっている状態です。

不動産も例外ではありません。

住宅を建てるためには、

・鉄筋や木材などの建築資材

・建設会社の人件費

・土地取得費

・設備費用

などが必要になります。

これらのコストが上昇すると、新築住宅の価格も上昇します。

新築価格が上がると、中古住宅や中古マンションの価格も押し上げられるため、結果として不動産全体の価格が上昇しやすくなります。

実際に首都圏や大阪圏では、新築マンション価格が過去最高水準に達しているエリアも少なくありません。

そのため、「不動産はインフレに強い資産」と言われることがあります。

ただし、すべての空き家の価値が上がるわけではない

ここで注意したいのが、「不動産価格が上がっている=自分の空き家も値上がりしている」とは限らないことです。

日本の不動産市場は二極化が進んでいます。

価格が上昇しているのは、

・大都市圏

・駅近エリア

・人口流入地域

・再開発エリア

が中心です。

 

一方で、

・人口減少地域

・過疎化が進む地方

・駅から遠い住宅地

・老朽化した住宅

などは、全国的な不動産価格上昇の恩恵を受けにくい傾向があります。

むしろ時間の経過とともに資産価値が下がっているケースも少なくありません。

「ニュースで不動産価格が上がっていると言っていたから大丈夫だろう」

と考えて放置するのは危険です。

空き家は持っているだけでお金がかかる

空き家の大きな問題は、利用していなくても維持費が発生することです。

代表的な費用として、

・固定資産税

・都市計画税

・火災保険

・管理費

・草刈り費用

・修繕費

などがあります。

例えば固定資産税だけでも年間数万円から十数万円かかることがあります。

さらに老朽化が進めば、

・屋根の修繕

・外壁補修

・給排水設備の交換

など、数十万円から数百万円単位の費用が発生することもあります。

空き家を所有しているだけで、毎年確実にお金が出ていくのです。

空き家放置のリスクは年々高まっている

近年は空き家問題が社会問題となっています。

そのため行政による管理指導も厳しくなっています。

適切な管理が行われていない空き家は、

・景観悪化

・倒壊リスク

・防犯上の問題

などを引き起こす可能性があります。

管理不全空き家と判断された場合、固定資産税の優遇措置が見直されるケースもあります。

また、近隣住民とのトラブルが発生すれば、所有者責任を問われる可能性もあります。

つまり、「使わないから放置しておく」という選択肢は年々難しくなっているのです。

売却を検討した方がよい空き家の特徴

次のような物件は、早めの売却を検討してもよいでしょう。

① 相続人が住む予定がない

相続した実家でよくあるケースです。

「いつか使うかもしれない」と思いながら、10年以上空き家になっていることも珍しくありません。

将来的な利用予定がないなら、維持費だけが発生する可能性があります。

② 人口減少地域にある

需要が減少する地域では、将来的に買い手が見つかりにくくなることがあります。

今後さらに人口減少が進めば、売却価格が下がる可能性もあります。

③ 建物の老朽化が進んでいる

築30年、40年を超える住宅は建物価値がほとんどなくなっているケースがあります。

時間が経過するほど修繕費も増えるため、早めの判断が重要です。

持ち続ける価値がある空き家とは?

一方で、次のような物件は保有継続も選択肢になります。

① 都市部の好立地

駅近や人気エリアの土地は、将来的にも需要が見込まれます。

特に再開発エリアでは資産価値が上昇する可能性があります。

② 賃貸活用できる

空き家を賃貸住宅として貸し出せれば、

  • 家賃収入
  • 将来の売却益

の両方を期待できます。

インフレ局面では家賃も上昇しやすいため、収益不動産としての魅力が高まる場合があります。

③ 土地に価値がある

建物の価値がなくても、土地そのものに高い価値があるケースがあります。

このような物件は長期保有が有利になる可能性があります。

「感情」ではなく「数字」で判断しよう

実家には思い出があります。

そのため売却をためらう方も少なくありません。

しかし、不動産は感情だけで判断すると後悔することがあります。

大切なのは、

・年間維持費

・固定資産税

・修繕費

・想定売却価格

・想定家賃収入

を比較することです。

例えば年間20万円の維持費がかかる空き家を10年間保有すれば、それだけで200万円の支出になります。

さらに修繕費が発生すれば負担はもっと大きくなります。

「なんとなく持っている」

ことが最もコストの高い選択になるケースもあるのです。

【まとめ】インフレだから売るのではなく、将来価値で判断する

インフレによって不動産価格が上昇している今は、空き家の売却を検討する良いタイミングかもしれません。

しかし、重要なのは「インフレだから売る」「不動産だから持つ」という単純な判断ではありません。

その物件が、

・今後も価値を維持できるのか

・家賃収入を生み出せるのか

・維持費に見合う資産なのか

を冷静に分析することが重要です。

空き家は放置すれば負債になる可能性があります。

しかし、適切に活用すれば将来の資産形成にもつながります。

まずは不動産会社に査定を依頼し、「今売ったらいくらになるのか」を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

その数字をもとに、売却・賃貸・保有のどれが最も合理的な選択なのかを考えることが、後悔しない空き家対策の第一歩となるでしょう。

2026/6/7