所有している投資用物件はインフレだから売却した方がよいのか?不動産投資家が考えるべき判断基準

所有している投資用物件はインフレだから売却した方がよいのか?不動産投資家が考えるべき判断基準

著者紹介

代表取締役 武田 拓也

ファイナンシャルプランナー(AFP)/社会福祉士/高校教諭1種「福祉」
代表取締役 武田 拓也

元「高校教員」、現役「専門学校講師」
資産運用歴18年の実力派ファイナンシャルプランナー。
失敗談や成功例を実体験に基づいてお伝えしています。
社会福祉士としてNPO法人の理事や大学校友会の理事長など地域福祉にも取り組み中。
高校や大学、事業団体などで年100回以上の講演を実施。
趣味:人の話を聞くこと、資産運用(株式投資、不動産投資、投資信託、その他)

「不動産価格が上がっている今こそ売り時?」

近年、日本では物価上昇(インフレ)が続き、不動産価格も高水準で推移しています。

そのため、不動産投資をしている方の中には、

・今なら高く売れるのでは?

・金利が上がる前に売却した方がいいのか?

・まだ価格上昇が続くなら持ち続けるべきか?

と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

特に2024年以降は、日銀の金融政策修正や金利上昇への警戒感から、不動産市場の先行きを不安視する声も増えています。

しかし結論から言えば、「インフレだから売却する」「価格が上がったから利益確定する」という単純な判断は危険です。

不動産投資で重要なのは、売却益ではなく、その物件が今後どれだけ収益を生み出せるかという視点です。

今回は、インフレ時代に投資用不動産を売却すべきかどうかについて、不動産投資家の視点から解説します。

インフレは不動産投資家にとって追い風になりやすい

まず理解しておきたいのは、不動産は一般的にインフレに強い資産だということです。

インフレが進むと、

・土地価格の上昇

・建築費の上昇

・人件費の上昇

・家賃の上昇

が起こりやすくなります。

例えば、新築アパートを建築するコストが上昇すると、新規供給が減少します。

その結果、既存の賃貸物件の価値が相対的に高まり、家賃上昇につながるケースがあります。

つまり不動産オーナーにとっては、

「資産価値の上昇」だけでなく、

「家賃収入の増加」も期待できるのです。

これが株式や預金にはない不動産投資の大きな魅力です。

なぜ今、不動産価格が上昇しているのか

現在の不動産価格上昇には複数の要因があります。

建築費の高騰

木材や鉄骨などの建築資材価格が上昇しています。

さらに建設業界の人手不足も深刻化しており、人件費も増加しています。

結果として新築マンションやアパートの価格は大幅に上昇しています。

インバウンド需要の回復

東京・大阪・京都などでは海外投資家や外国人富裕層による購入需要が増えています。

これが不動産価格を押し上げる要因となっています。

賃貸需要の増加

都市部への人口集中が続いているため、賃貸需要は依然として底堅い状況です。

特に単身者向け物件や駅近物件では空室率が低い状態が続いています。

それでも売却を検討した方がよいケース

インフレに強い不動産ですが、すべての物件を保有し続けるべきとは限りません。

① 利回りが低下している

例えば、現在価値:5,000万円

年間家賃収入:200万円の場合、

表面利回りは4%です。

もし売却して他の物件へ買い替えることで7~8%の利回りを確保できるなら、資産効率は改善します。

不動産投資は価格上昇ではなく、投下資本に対する収益性で判断することが重要です。

② 修繕リスクが高まっている

築20年、30年を超える物件では、

・外壁工事

・屋上防水

・給排水管更新

・エレベーター交換

など多額の修繕費が発生します。

将来的なキャッシュフローを考慮すると、修繕前に売却する方が有利なケースもあります。

③ 人口減少エリアにある

地方都市や郊外では人口減少が進んでいます。

今後、空室率上昇や家賃下落が予想されるエリアでは、価格が維持されているうちに売却する選択肢も考えられます。

 

③ ローンが変動金利

インフレ局面では物価が上がります。そのため、インフレを抑制するために金利が上昇します。

変動金利ローンを利用している場合、金利が上昇するとローン返済の負担が増加します。

変動金利で借入を行っている投資家にとって、キャッシュフローの悪化により負担が増大します。

むしろ持ち続けた方がよいケース

① 家賃収入が安定している

不動産投資の本質はインカムゲインです。

毎月安定して家賃収入が入っているなら、無理に売却する必要はありません。

特にローン残高が減少している物件は、将来的に高いキャッシュフローを生み出す可能性があります。

② 人気エリアにある

東京23区、大阪市中心部、福岡市中心部など人口流入が続くエリアでは、長期的な需要が期待できます。

こうした物件はインフレヘッジとしても有効です。

本当に考えるべきは「売却」ではなく「資産の組み換え」

成功している投資家は、「売るか持つか」だけで考えていません。

重要なのは、「今の物件が最も効率よく資産を増やせるか」という視点です。

例えば、

・1棟マンションを売却して一棟アパートへ

・利回りの低い物件を売却して高利回り物件へ

・地方物件から都市部物件へ

など資産の組み換えを行うことで、自分の目的に即した行動が求められます。

売却はゴールではなく、資産戦略の一部なのです。

売却時に注意したい税金

投資用不動産を売却する場合、譲渡所得税が発生する可能性があります。

減価償却によって帳簿価格が下がっている場合、想定以上に税金が発生することもあります。

売却を検討する際は、「売却価格」だけでなく、「税引後でいくら残るか」を確認することが重要です。

【まとめ】インフレの今こそ「収益性」で判断する

インフレによって不動産価格が上昇している現在は、確かに売却を検討するタイミングの一つです。

しかし、不動産投資の本質は値上がり益だけではありません。

大切なのは、

・家賃収入は十分か

・将来の需要はあるか

・修繕リスクはどうか

・売却後の税引後利益はいくらか

・より良い投資先はあるか

を総合的に判断することです。

 

不動産価格が高いから売るのではなく、「その物件が今後も資産を増やしてくれるか」という視点で考えることが重要です。

インフレ時代だからこそ、目先の売却益に惑わされず、長期的なキャッシュフローと資産価値の両面から判断していきましょう。

2026/6/8