高齢者の「住み替え」でよくあるトラブル

高齢者の「住み替え」でよくあるトラブル

著者紹介

代表取締役 武田 拓也

ファイナンシャルプランナー(AFP)/社会福祉士/高校教諭1種「福祉」
代表取締役 武田 拓也

元「高校教員」、現役「専門学校講師」
資産運用歴18年の実力派ファイナンシャルプランナー。
失敗談や成功例を実体験に基づいてお伝えしています。
社会福祉士としてNPO法人の理事や大学校友会の理事長など地域福祉にも取り組み中。
高校や大学、事業団体などで年100回以上の講演を実施。
趣味:人の話を聞くこと、資産運用(株式投資、不動産投資、投資信託、その他)

高齢者の「住み替え」は、住環境の改善や介護への備えとして有効ですが、実際には多くのトラブルが発生しています。
特に、親の介護や施設入居を考える家族が知っておくべき代表的なトラブルをまとめました。

① 本人が住み替えを拒否する

最も多いトラブルです。

長年住み慣れた自宅には思い出があり、高齢者本人にとっては「家を離れる=人生を否定される」と感じることもあります。

よくあるケース

  • 「まだ元気だから必要ない」
  • 「施設には入りたくない」
  • 「他人と暮らしたくない」
  • 「家を売るなんて絶対嫌だ」

家族は安全面を心配していても、本人は危機感を持っていないことが少なくありません。

本人が住み替えを拒否する際の対策

・事故や介護が必要になる前から話し合う

・施設見学を一緒に行う

・「引っ越し」ではなく「生活を楽にする選択肢」として説明する

 

② 高齢者施設へ入居後に「こんなはずじゃなかった」と後悔する

パンフレットや見学だけではわからないこともあります。

よくある不満

・食事が口に合わない

・人間関係が合わない

・自由に外出できない

・スタッフの対応に不満がある

結果として、「家に帰りたい」と訴えるケースも少なくありません。

高齢者施設へ入居後に後悔しないための対策

・複数施設を比較する

・体験入居を利用する

・入居者やその家族から施設について話を聞く

③ 高齢者施設は想定以上に費用がかかる

施設費用は月額利用料だけではありません。

見落としやすい費用

・介護保険自己負担

・医療費

・おむ・つ代

・理美容代

・レクリエーション費

・管理費や上乗せサービス費

月15万円程度と思っていたら、「実際は20~30万円になる」こともあります。

対策

・パンフレットに記載されていない費用についても確認して「総額」で試算する

・要介護度が上がった場合も考えておく

・5~10年住んだ場合の資金計画を立てる

 

④ 自宅が売れない

住み替え費用を自宅売却資金で賄う予定だったのに、売却できないケースもあります。

特に売りにくい物件

・築古戸建

・地方の住宅

・再建築不可物件

・空き家期間が長い物件

住み替え後も自宅が売れず、「固定資産税」が発生し続けることがあります。

対策

・住み替え前に査定を受ける

・売却可能価格を確認する

・賃貸活用も検討する

⑤ 認知症発症後に手続きできなくなる

非常に多い問題です。認知症になると、

・不動産売却

・賃貸契約

・銀行手続き

などができなくなります。

家族が代わりに売却しようとしても、本人の判断能力がなければ契約できません。

その結果、「施設費用は必要なのに家が売れない」という事態に陥ります。

対策

・元気なうちに準備する

・家族信託や任意後見制度を検討する

⑥ 家族間で意見が対立する

親の住み替えは相続問題とも関係します。

よくある対立

長男
「施設に入れた方がいい」

次男
「まだ家で暮らせる」


「家を売りたくない」

このように意見が分かれ、話が進まなくなることがあります。

対策

・早めに家族会議を行う

・親本人の意思を確認する

・介護サービスに詳しい専門職やFPなど第三者を交えて話し合いをする

⑦ 高齢者施設から退去を求められる

意外と知られていませんが、老人ホームなどでは退去勧告が行われることがあります。

主な理由

・医療依存度が高くなった

・認知症症状が重くなった

・他の入居者とのトラブル

など施設で対応できない状態になった場合があります。

入居したら、それで安心とは限りません。

対策

・入居契約書を確認し、退去の条件を把握する

・看取り対応の有無を確認する

・医療連携体制を確認する

高齢者の住み替えで最も重要なこと

多くのトラブルは、「まだ元気だから大丈夫」と先送りした結果

起こります。

特に認知症になると、不動産売却や契約手続きが難しくなり、選択肢が大きく狭まります。

高齢者の住み替えは「介護が必要になってから考える」のではなく、

元気なうちに

・どこで暮らしたいか

・自宅をどうするか

・お金は足りるか

・誰が支援するか

を家族で話し合っておくことが大切です。

住み替えの失敗は「施設選び」よりも、実は準備不足によって起こるケースが圧倒的に多いのです。

2026/6/5