近年、日本株市場では「防衛関連株」が注目を集めています。
防衛予算の増額、地政学リスクの高まり、ニュースで頻繁に見かける防衛強化という言葉。
こうした流れから「防衛株はこれから伸びるのでは?」と感じる方も多いでしょう。
しかし、防衛株は一般的な成長株とは性質が大きく異なる投資対象です。
特に初心者の方にとっては官需(官公庁需要)特有のリスクを理解せずに投資すると、
「思ったほど上がらない」「急に下がった」という結果になりがちです。
本記事では防衛株投資を検討する初心者の方に向けて、
必ず知っておくべき注意点と官需特有リスクを分かりやすく解説します。
防衛株とは?まず押さえておきたい基本
防衛株とは、防衛省や自衛隊向けに装備・システム・部品・サービスを提供する企業の株式を指します。
代表例としては、
〇戦闘機・ミサイル・艦艇などの装備品
〇レーダー・通信・サイバーなどの防衛IT
〇弾薬・火薬・推進薬などの素材・部品
〇整備・保守・運用支援
などが挙げられます。
代表的な企業には三菱重工業、川崎重工業、三菱電機、NECなどがあります。
注意点① 防衛株は「民需株」と値動きの考え方が違う
初心者がまず戸惑うのが、
「防衛予算が増えているのに株価が動かない」という現象です。
これは、防衛株の売上の多くが、
・国との長期契約
・数年単位の開発・納入スケジュール
・検収・引き渡しまで売上が立たない
といった特徴を持つためです。
一般的な消費関連株やIT株のように、
「売れた=すぐ業績に反映」という構造ではありません。
👉 防衛予算=即株価上昇とは限らない点は、初心者が最も誤解しやすいポイントです。
注意点② 官需は「政治・外交」に大きく左右される
防衛株最大の特徴は、需要の決定権が政府にあることです。
つまり、
・政権交代
・世論の変化
・外交関係の改善・悪化
・国際情勢の急変
といった企業努力ではどうにもならない要因で、
方針が変わる可能性があります。
たとえば、
・緊張が高まれば「防衛強化」が追い風
・緊張が緩めば「予算抑制」が意識される
というように、株価が政治イベントに反応しやすいのが防衛株の特徴です。
注意点③ 「受注=利益」ではない
防衛株では、
「○○を受注!」というニュースが好材料として報道されることがあります。
しかし、ここにも注意が必要です。
なぜなら…
・初期開発費が大きい
・量産に入るまで赤字のケースがある
・採算は数年後に改善する設計
という案件が少なくないからです。
特に初心者の方は、
受注ニュース → 株価上昇 → 高値で購入
という流れに飛びつきやすく、
その後の調整局面で含み損を抱えるケースが多く見られます。
注意点④ 防衛株は「テーマ株」になりやすい
防衛株は、
・戦争
・ミサイル
・有事
・国防
といった感情を刺激しやすいテーマを持っています。
そのため、
・SNS
・YouTube
・投資系インフルエンサー
などで話題になりやすく、
短期資金が集中しやすい=値動きが荒くなる傾向があります。
初心者の方がテーマ性だけで飛び乗ると、
・高値掴み
・急落時に売れない
・感情的な売買
につながりやすいため注意が必要です。
注意点⑤ 防衛比率が低い企業も多い
防衛関連として名前が挙がる企業の中には、
・防衛売上は全体の数%程度
・本業は民需、海外事業
という会社も少なくありません。
この場合、
・防衛予算が増えても業績への影響は限定的
・株価は防衛より景気や為替に左右される
ということが起こります。
👉 「防衛関連」というラベルだけで判断しないことが重要です。
初心者が防衛株で失敗しやすいパターン
よくある失敗例は次の通りです。
・ニュースを見て衝動買い
・防衛予算=即成長と誤解
・短期で結果を求める
・1銘柄に集中投資
・値動きに耐えられず損切り
防衛株は短期売買向きではない銘柄が多い点を理解しておく必要があります。
【初心者向け】防衛株と上手に付き合う考え方
初心者の方には、以下のスタンスがおすすめです。
・ポートフォリオの一部(10〜20%)に抑える
・防衛「専業」か「周辺」かを見極める
・長期視点で構える
・受注残・事業構成を見る
・民需と官需のバランスを意識する
特にNISA口座では、
「防衛株だけに偏らない分散」が重要です。
【まとめ】防衛株はポートフォリオの1つ
防衛株は、
・国策テーマ
・長期需要
・参入障壁が高い
という魅力がある一方で、
・官需特有の不透明さ
・政治リスク
・業績反映の遅さ
といった初心者が見落としやすいリスクも併せ持っています。
大切なのは、
「防衛株=必ず儲かる」
ではなく、
「防衛株は性格を理解して使う投資対象」
と捉えることです。
正しい知識を持てば、防衛株は
長期分散投資の一部として有効な選択肢になります。
以下に代表的な防衛銘柄の一例を掲載します。
投資は自己責任で慎重に行いましょう。
代表的な防衛銘柄の一例
- 日立製作所(6501)
IT×社会インフラの総合力(デジタル、電力、鉄道、産業機器)。防衛・安全保障と親和性の高い領域(ミッションクリティカルIT、セキュリティ、センシング/制御)を持ち、公共案件の比率が高い点が特徴。
- 三菱重工業(7011)
国内防衛の中核プレイヤー。航空・防衛・宇宙に加え、エナジー(発電、ガスタービン等)も大きい。装備品は長期契約・保守運用が収益源になりやすく、国策色が強い一方で、案件進捗や採算管理が株価の変動要因。
- 三菱電機(6503)
FA、空調、車載、社会インフラなど幅広い電機大手。防衛では電子機器・センサー/通信・宇宙関連など“システムの頭脳”側が強みになりやすい。景気循環の影響を受ける事業と、官需・保守型の事業が混在するのが特徴。
- 富士通(6702)
サービスソリューション中心のIT企業。官公庁・大企業向けの基幹システム、クラウド移行、運用保守に強い。防衛関連では、指揮通信・情報システム、サイバー、ミッションクリティカル運用の領域がテーマになりやすい。
- NEC(6701)
通信・ITと、公共/安全保障領域に強い企業。ネットワーク、サイバー、認証などの技術が“安全保障×デジタル”の流れで注目されやすい。防衛ではC4ISR系(情報・通信・統合)などシステム案件の比重が高くなりやすい。
- 小松製作所(6301)
建機・鉱山機械の大手。資源市況や世界のインフラ投資に業績が連動しやすい一方、保守/部品・ソリューション(ICT建機)で収益の安定化を進める。防衛関連では工兵・特殊車両/装備の周辺領域や災害対応需要が連想されやすい。
- 川崎重工業(7012)
航空機、ヘリコプター、潜水艦、巡航ミサイル類の開発・製造の重工業大手。特に自衛隊向け機体・部品・海洋装備で防衛省案件実績が高い。国内民需(鉄道車両、建機等)と併存だが、潜水艦・哨戒機の国策プロジェクトが収益と株価材料。
- 東京計器(7721)
精密計器最大手で、航空機・艦船・宇宙関連計器の開発・製造を主力とする。防衛省向け計測機器、慣性航法装置、航空・海洋計器で長年実績。精密・計測技術の強みを基盤に成長を図る。PERは比較的高めだが収益性(ROE)は安定。
- 日本製鋼所(5631)
大型鋼構造機械、重工機器、火砲・砲弾類などを製造する機械メーカー。自衛隊需要(陸自火砲、海自艦砲)への納入実績あり。高精度・高耐久製品が強みとなり、インフラ・資源系民需とのミックスで安定成長を図る。
- 豊和工業(6203)
自動小銃、迫撃砲など陸上自衛隊向け火器・特殊車両の製造実績を有する専門機械メーカー。小型中心ながら確固たる防衛実需を持つ。スタンドアローン銃器で国内シェア強く、戦術車両や警備装備分野の受注も特色。
- 沖電気工業(6703)
通信機・電子機器大手。防衛テーマでは潜水艦用水中音響ソナーなど先端センサーや通信システムで成果。国内外の防衛・海保・研究機関向け装備供給を行い、ネットワーク・情報系製品との強みを活用している。
- 島津製作所(7701)
分析・計測機器メーカー。航空機用ディスプレイ・計測系装置など防衛装備品の高精度部品やシステムに応用される技術力を有する。元来の研究開発製品群が、軍事電子・宇宙・航空機系製品の競争力向上に寄与。
- カーリット(4275)
化学品メーカー。固体ロケット推進薬の原料や火薬関連品、機能性化学品を供給。宇宙用固体推進薬材料では独自性が高く、火薬・推進剤関連は防衛省・航空宇宙需要に結びつきやすい。
- 日油(4403)
化学系総合企業。推進薬・火薬原料、防衛装備周辺化学品を取り扱い、機能性素材分野では防衛・宇宙機分野向け部材の適用が進む。専門性の高い化学・材料技術が評価ポイント。
- ミネベアミツミ(6479)
精密部品メーカー。航空機・船舶機器向け高精度ベアリング・電子機器部品で防衛需給の裾野に露出。自動車・産業機械民需が主力だが、防衛装備部品の市場拡大でシェア向上余地あり。
- ジャムコ(7408)
航空機整備・改修大手。民需の航空機客室関連から防衛機向け修理・改修・装備強化受注に対応。防衛省や海保向け小型航空機整備受託が特色。航空機サービス分野で周辺防衛市場との接点を持つ。
