「なぜか貯金が貯まらない…」そんな人ほど実は、保険に多く加入しすぎている傾向があります。
もちろん保険は万が一に備えるために必要なものです。
しかし、必要以上に加入してしまうことで家計を圧迫し、長期的な資産形成を妨げてしまうことが少なくありません。
ここでは「お金が貯まらない人の保険の入りすぎ問題」をファイナンシャルプランナー(FP)視点で解説します。
保険と貯蓄の関係
保険は 「リスクに備える」 ための金融商品です。
一方で貯蓄は 「将来使うために貯めて増やしていく」 目的の資産です。
しかし日本では生命保険文化が根強く、保険商品に「貯蓄機能」を持たせているケースが多く、保険=貯金の代わりと誤解されることも少なくありません。
「保険なら確実にお金が増えると聞いた」
「貯金が苦手だから強制的に積み立てたい」
「銀行預金よりも利回りがいいと言われた」
しかし実際には、
貯蓄と保障がセットになった商品は、コストが割高になることが多い
のが現実です。
さらに保険は長期間の契約が基本で、「一度加入すると見直ししないまま支払いだけ続く」という現象が起きがちです。
その結果、知らないうちに家計から毎月数万円が流出して貯金ができなくなってしまいます。
また10年以内に解約すると手数料が発生して元本割れすることもあります。
保険に加入しすぎるデメリット
保険に加入しすぎると、次のような問題が生じます。
①月々の固定費が膨らむ
保険料は 「一度加入すると当たり前に払い続ける固定費」です。
例えば月3万円の掛け捨て保険は年間36万円、10年で360万円。
この金額が投資や貯蓄に回せていたら…と考えると、大きな損失です。
②貯蓄が計画通りに進まない
「保険に入っているから安心」という心理が働き、貯金を後回しにしてしまうことが多いです。そのため保険以外の蓄えがなく、急な支出で保険を短期間で解約してしまうと元本割れして損をすることもあります。
③解約のタイミングが難しくなる
「元本割れが嫌」「もったいない」などの理由で、やめたくてもやめられない状態になってしまうこともあります。保険の加入時に目的をはっきりさせ、途中解約をしなくても良いようにプランニングをしましょう。
なぜ保険に多く加入してしまうのか
心理と習慣が大きく影響しています。
①「不安」の影響を受けやすい
「もしも病気になったら?」
「家族の生活が困窮する」
「多くの人が加入している」
などと営業されると不安が刺激され、必要以上に保障を求めてしまうことがあります。
②金融リテラシーが不足している
「保険は必要」「将来が不安」
でも、保障の内容や優先順位を整理できていないことも要因の1つです。
③独身→結婚→出産→教育費…ライフステージに応じて加入が積み重なる
見直しをしないまま、契約だけが増えていく「保険の肥満化」が起こしている場合があります。
定期的に保険の見直しを行い、不要な保険は解約していきましょう。
保険の適正な考え方
保険はあくまで 大きなリスクに備えるためのものです。
FPが推奨する優先順位は以下の通り↓
| 優先度 | 内容 | 目的 |
| ★★★ | 医療・死亡保障 | 家計破綻を防ぐ |
| ★★ | 就業不能・介護 | 長期的な所得喪失に備える |
| ★ | 積立保険 | 余裕資金の範囲で検討 |
貯蓄や投資を優先し、保険は必要最低限に抑えるのが原則です。
例えば…
✔ 医療費は高額療養費制度で上限がある
✔ 一家の大黒柱は死亡保障が優先
✔ 貯蓄や資産運用ができる人は保険に頼りすぎない
という整理が重要になります。
FP相談でよくある事例
実際の相談では、次のようなケースが非常に多いです。
◆ケース1:貯金ゼロ、保険料月4万円の30代夫婦
死亡・医療・がん・収入保障・積立型…合わせて6本の契約
→ 必要保障のみ残し、2本解約
→ 月2万円削減 → 年24万円の貯蓄へ回せた
◆ケース2:積立保険が老後資金の中心
解約返戻金重視で保険加入
→ 手数料が高く、増え方が遅い(30年の積立で10%ほどの増加)
→ 積立NISAへ切り替えて、老後資金づくりが効率的に(30年の積立で150%ほどの増加見込)
◆ケース3:子ども独立後も手厚い死亡保障
独身時代から保険を更新し続けて保険料が高騰
→ 保障額を大幅カット
→ 車両費・旅行に回せる余裕が生まれた
【まとめ】保険は「安心のためのコスト」バランスが重要
保険は大切ですが、たくさん入ればよいというわけではありません。
逆に多く入り過ぎると月々の生活を圧迫してしまいます。
保険を見直すことは、お金が貯まる第一歩
あなたが加入している保険は本当に必要なものですか?
もし少しでも疑問があるなら、見直しのサインです。
【加入すべき保険の種類・優先順位】
★★★【最優先】家計破綻を防ぐ保険(必須)
① 死亡保険(定期保険)
・一家の収入源が亡くなった場合の備え
・特に 子どもがいる家庭は最重要
・終身より定期が合理的(必要な期間だけ)
目安:必要保障額から算出(例:2,000万〜5,000万円)
② 就業不能保険
・重病や怪我で長期間働けない場合の収入補填
・死亡保険より使う可能性が高い
目安:手取り月額×必要期間
死亡よりも「働けない」リスクの方が確率は高い
③ 高額療養費制度で賄えない部分の医療保険
・入院日数短縮時代 → 日額よりも一時金型が重要
・がん保障は必要に応じて
目安:入院一時金10万〜20万円/がん診断給付金50〜100万円
★★【余裕があれば】生活の質を守る保険
④ がん保険(家族に病歴あり・不安の強い人向け)
・診断給付金中心の設計でOK
・先進医療特約の確保
⑤ 介護保険(40代から検討)
・自助努力(貯蓄・資産運用)とセットで検討
★【優先度低め】貯蓄を兼ねる保険
⑥ 個人年金保険 / 積立型保険(外貨建・変額等)
・保険の本質は保障であり貯蓄ではない
・手数料が高く、途中解約リスクも注意
積立・投資資金はNISAなどで確保が原則
FPが伝える保険のポイント
ポイント①
小さなリスクは貯蓄・大きなリスクは保険で備える
| リスクの大きさ | 対応策 |
| 小さな医療費(数万円〜数十万円) | 貯蓄で対応 |
| 長期療養や死亡など家計破綻リスク | 保険で対応 |
ポイント②
必要性がなくなれば保険は減らすべき
・子どもの独立
・貯蓄が増えた
・住宅購入で団信に加入した
→ 年齢と共に保障額は減らすのが合理的
ポイント③
保険は固定費。入りすぎ=貯蓄不足の原因
保険貧乏にならないように、
・必要保障額を計算
・「不足する部分だけ」保険で補う←社会保障制度を正しく理解する
これが鉄則です。
【まとめ】
| 優先順位 | 保険の種類 | 目的 | 対象 |
| ★★★ | 死亡保険 | 万一時の生活保障 | 扶養家族あり |
| ★★★ | 就業不能保険 | 働けない時の収入保障 | 全労働者 |
| ★★ | 医療保険(最低限) | 入院・手術の補填 | 全員 |
| ★★ | がん保険 | 高額医療対策 | 不安・家族に病歴あり |
| ★★ | 介護保険 | 老後の生活保障 | 40代以降 |
| ★ | 個人年金・積立保険 | 資産形成 | 不要※NISA優先 |
もし今見直すなら?
・「死亡」と「働けないリスク」をまず確認
・医療保険は 過剰保障になってないかを点検
・貯蓄・投資とのバランスを再確認
【必要保障額の算出方法】
基本の考え方はシンプルで、
・必要保障額 = 遺族に必要なお金 −(遺族年金+貯蓄などの資産)
これをもう少し細分化して計算します。
① 遺族に必要なお金(支出)
代表的な項目
| 項目 | 内容 |
| 生活費 | 遺族の生活費×必要年数 |
| 住居費 | 家賃 or 住宅ローン残債 |
| 教育費 | 子どもの人数・年齢による |
| 葬儀費 | 一時的に必要 |
| その他 | 車購入・医療費など |
例)生活費
家族構成:配偶者+子ども1人
生活費:月25万円
必要年数:15年(子が自立まで)
➡ 25万円 × 12ヶ月 × 15年 = 4,500万円
② 遺族が受け取れるお金(収入)
| 項目 | 代表内容 |
| 遺族年金 | 国・会社員の場合手厚い |
| 死亡退職金・弔慰金 | 勤務先による |
| 貯蓄・金融資産 | すぐ使える資産 |
| 損害保険の給付 | 交通事故など特定ケース |
計算例まとめ
仮に必要生活費4,500万円だとして、
遺族年金:年間100万円×15年=1,500万円
貯蓄:500万円
その他:0万円
➡ 必要保障額
= 4,500万円 −(1,500万円+500万円)
= 2,500万円
保障額算出のポイント
・子どもの有無で大きく変わる
・会社員か自営業かで遺族年金が大きく変わる
・住居(持家or賃貸)も重要
・年齢が上がるほど必要保障額は減る
→ 子が独立し、貯蓄が増えるため
必要保障額をベースに保険を考える
必要保障額に対し、
▶ 過不足が出ないように死亡保障を調整
▶ 老後資金は貯蓄・投資で準備
▶ 保険の掛け捨てでも問題なし
これが合理的な生命保険設計です。
【加入中の保険チェック項目】
① 保険の種類と目的(わかる範囲で)
例)生命保険(死亡保障)/医療保険/がん保険/就業不能保険/個人年金/積立型等…
② 保険料(月額 or 年額)
③ 保障内容(簡単でOK)
・死亡保障:〇〇万円
・入院:1日△△円
・がん診断:□□万円 など
④ 契約者/被保険者
・誰を守る保険か(ご本人・配偶者・子ども)
⑤ 加入時期 & 満期(ある場合)
⑥ 加入の理由
・「営業されて」「家族のため」「貯金代わり」など
⑦ 返戻金・積立金の有無(わかれば)
