不動産投資における一棟アパートのメリットとデメリット【大阪FP】

不動産投資における一棟アパートのメリットとデメリット【大阪FP】

著者紹介

代表取締役 武田 拓也

ファイナンシャルプランナー(AFP)/社会福祉士/高校教諭1種「福祉」
代表取締役 武田 拓也

元「高校教員」、現役「専門学校講師」
資産運用歴18年の実力派ファイナンシャルプランナー。
失敗談や成功例を実体験に基づいてお伝えしています。
社会福祉士としてNPO法人の理事や大学校友会の理事長など地域福祉にも取り組み中。
高校や大学、事業団体などで年100回以上の講演を実施。
趣味:人の話を聞くこと、資産運用(株式投資、不動産投資、投資信託、その他)

【はじめに】不動産投資の王道「一棟アパート投資」

不動産投資の中でも「一棟アパート投資」は、高い収益性と資産形成効果を兼ね備えた代表的な投資手法です。
区分マンション投資と比べてスケールが大きく、家賃収入も安定しやすいことから「本格派の不動産投資家」の登竜門ともいわれます。

ただ初期投資額が大きく、空室や修繕などのリスクにも注意する必要があります。
適切な戦略と管理体制を整えなければ思わぬ赤字に転落するケースもあるのが現実です。

このコラムでは、「一棟アパート投資のメリット・デメリット」をファイナンシャルプランナーの視点で整理し、これから投資を検討する方が理解しておくべきポイントを詳しく解説します。


1. 一棟アパート投資とは?概要と特徴

一棟アパート投資とは、アパート1棟を丸ごと購入し、複数の入居者に部屋を貸し出すことで家賃収入を得る手法です。
区分マンションのように1室単位ではなく、建物全体を所有するため家賃収入のスケールが大きいのが最大の特徴です。


2. 一棟アパート投資の主なメリット

① 高い利回りとスケールメリット

一棟アパートの最大の魅力は、高い収益性(利回り)にあります。
同じ価格帯の区分マンションに比べて、表面利回りは5〜9%と高く設定されるケースが多く、
複数の部屋から家賃収入を得るため、空室リスクを分散できるのも大きな強みです。

また、建物全体を所有することで運営コストを一括管理できるためスケールメリットが働きます。
複数棟を保有してFIREするためのステップアップとし適している選択肢です。


② 資産拡大スピードが速い

一棟物件は金額が大きい分、レバレッジ効果(他人資本の活用)が高く、
金融機関からの融資を活用すれば自己資金を抑えつつ、大きな資産を運用できます。
家賃収入を再投資に回すことで資産規模を短期間で拡大できるのが一棟投資の醍醐味です。

また、相続における評価額を抑えることができるため、相続対策としても期待できます。


③ 経営の自由度が高い

一棟所有の場合、オーナーが建物全体の意思決定権を持ちます。
賃料の設定、リフォーム方針、外壁修繕の時期など、すべて自ら判断できるため、
投資戦略に応じて柔軟に経営方針を調整できます。

区分マンションのように管理組合の制約を受けず、
自分の判断で物件の価値を高められる点は投資家にとって大きな魅力です。


④ 築古物件の「再生投資」で高利回りが狙える

中古アパートをリフォーム・リノベーションして再生する手法も人気です。
築30年以上の物件は価格が下がりやすく、利回り10%を実現できるケースもあります。
「低価格で仕入れ、修繕で価値を高める」再生戦略は、
不動産投資家の中でも中上級者が実践する高収益モデルとして注目されています。


⑤ 事業化・法人化による節税メリット

一棟アパートは事業性が高く、法人化との相性が良いのも特徴です。
賃貸業として法人を設立することで、

  • 経費計上の範囲拡大(車・通信費・役員報酬など)

  • 所得分散による税負担軽減

  • 退職金制度の活用
    などの節税効果を享受できます。

中長期的に見ると、資産形成+税金対策の両立が可能な投資形態です。


3. 一棟アパート投資のデメリット・リスク

① 初期投資額が大きく、金利リスクが高い

一棟アパートは1億円規模の融資が必要になるケースも多く、
金利上昇や返済計画の誤りが致命傷になりかねません。
自己資金の抑えて自己資金比率を低くすると、少しの空室や修繕でもキャッシュフローが悪化し、
ローン返済が困難になる「逆ザヤ」リスクも存在します。

また、金利が上昇局面にある現在では金利が上昇した際に対応できる余剰資金を準備しておくことが求められます。


② 空室・滞納リスクの影響が大きい

部屋数が多い分、空室リスクを分散できるとはいえ、
エリアの賃貸需要が落ち込めば一度に複数の空室が発生する可能性もあります。
特に地方都市や郊外では人口減少や賃料下落の影響を受けやすく、
収益が一気に崩れるリスクも無視できません。

そのため、立地分析・競合調査・賃貸需要の把握は欠かせません。


③ 維持管理・修繕コストが高い

建物全体を所有するため、外壁塗装・屋根修繕・配管工事などの費用をすべてオーナーが負担します。
1回の大規模修繕で数百万円かかることも珍しくありません。
修繕を先送りにすれば入居率が下がることもあれば、頻繁に行うことでキャッシュフローを圧迫することもあります。
管理・修繕の知識やノウハウがなければ想定していた利益を得ることが難しいのが一棟。

そのためバランス感覚と経営スキルを問われる部分もあります。


④ 出口戦略を要検討

一棟アパートは売却先が「投資家」に限られるため、
流動性(売りやすさ)が低いのが弱点です。
特に築古物件は融資がつきにくく、買い手が限られます。
また、土地が狭小だったり再建築不可の場合は、売却価値が低くなることもあります。

出口戦略を事前に描かないまま購入するのは、最も危険なパターンです。


4. 成功する一棟アパート投資のポイント

① 「立地」と「賃貸需要」を最優先

収益の根幹は入居率です。
したがって、立地>建物の順で重視すべきです。
具体的には、

  • 駅徒歩10分以内

  • 商業施設・大学・病院などの生活圏内

  • 人口増加エリア
    これらを満たす地域は、安定した入居需要が見込めます。


② 「利回り」だけでなく「実質キャッシュフロー」で判断

表面利回りが高くても、修繕費・管理費・空室期間を考慮すれば、
実質利回りは下がります
購入前には「家賃収入-ローン返済-固定費-修繕費」をシミュレーションして
年間キャッシュフローが黒字であるかを確認しましょう。


③ 「再生+運営」の両輪で資産価値を高める

中古アパートの場合は購入して終わりではなく、
リノベーション・入居者属性の見直し・ネット環境整備など、収益向上策の実行力がカギです。
運営次第で家賃維持率や入居期間が変わり、資産価値の持続性に大きな差が生まれます。

最近ではネット注文による宅配が増えているので宅配ボックスを設置することで入居者の利便性を高めるのに一役買っています。


④ 「長期保有」を前提に出口を描く

一棟アパート投資は、短期転売で利益を狙うことも可能ですが
10〜20年の長期保有による安定キャッシュフローを目的とするのが王道です。
ローン完済後には「年金代わりの不労所得」を得られ、売却すれば手数料を除いたまとまった金額が手元に入ってきます。
その意味で長期戦で勝つ投資といえるでしょう。


5. 向いている投資家・向かない投資家

タイプ 特徴
向いている人 不動産を事業として捉え、長期的な資産拡大を目指す人
融資・税務に理解がある人 レバレッジや法人化を駆使して収益最適化できる
物件管理・再生に興味がある人 自ら関与し、収益改善を楽しめるタイプ
向かない人 借入に抵抗がある人、または短期利益を狙う人

【まとめ】一棟アパート投資は「経営力」が問われる投資

一棟アパート投資は、不動産投資の中でも最も事業性が高い領域です。
高い収益性を得られる一方で、資金計画・運営管理・修繕対応など、
オーナーの「経営判断力」が結果を大きく左右します。

サブリース契約により、管理を不動産会社へ丸投げできる仕組みもありますが、本来得られるはずの利益が損なわれてしまいます。

区分マンションのような「放置型」ではなく、自ら戦略を立てて運用する「経営型投資」
その意識を持てる投資家にとって、一棟アパート投資は資産拡大の最強ツールとなるでしょう。

2025/11/1