「もう60歳を過ぎてしまった」「今さら老後資金対策をしても遅いのでは?」
多くの方がそう感じます。しかし結論から言えば60歳からでも老後資金対策は十分に間に合います。
重要なのは、若い世代と同じやり方をしないこと。
年齢に合った現実的な戦略を取れば、老後の不安は大きく軽減できます。
この記事ではFP視点で60歳からの老後の資金準備について解説します。
60歳以降でも可能な理由
60歳からでも老後資金対策が可能な理由は大きく3つあります。
① 老後期間は思ったより長いが「収入ゼロ」ではない
多くの人が「定年=無収入」と思いがちですが、実際には年金、再雇用、パート収入などが発生します。
支出のすべてを貯蓄で賄うケースは意外と少なく、毎月の不足分をどう補うかが本質です。
② 支出のコントロール効果が大きい
60代以降は住宅ローン完済・教育費終了などにより、支出を下げやすい時期です。
月3万円の支出削減は、20年間で約720万円の効果があります。
増やすより減らす方が確実なのがこの年代の特徴です。
③ 目的が明確でムダなリスクを取らなくて済む
老後資金は「いつ・いくら必要か」が明確です。
そのため、ギャンブル的な投資をする必要はなく安定重視の戦略が取りやすくなります。
現実的な選択肢
60歳からの老後資金対策は、「増やす」「守る」「使う」を同時に考える必要があります。
① 働き方を少し工夫する
フルタイムでなくても月5〜10万円の収入があるだけで資金寿命は大きく伸びます。
再雇用、業務委託、経験を活かした非常勤など体力に合わせた収入確保が有効です。
② 資産運用は「低リスク・分散」が前提
60代以降の運用は「一発逆転」ではなく「長持ちさせる」ことが目的です。
値動きの激しい商品に集中するのではなく複数の資産に分散し、取り崩しも想定した運用が重要です。
③ 住居と保険の見直し
持ち家の活用、住み替え、不要な保険の解約などは即効性があります。
特に保障が過剰な保険は老後資金を圧迫する典型例です。
リスクを抑える考え方
60歳からの最大のリスクは「大きく失うこと」です。
① 元本割れを前提にしない
回復を待つ時間が限られるため大きな下落を受けない資産運用が必須です。
利回りよりも「変動の小ささ」を重視しましょう。
② 生活費と運用資金を分ける
近い将来使うお金まで運用に回すと、相場変動が不安の原因になります。
最低でも生活費2〜3年分は現金で確保しておくことが安心につながります。
③ 取り崩しを前提に考える
老後資金は「増やし続ける」ものではなく、「計画的に使う」ものです。
取り崩しながらでも安定する設計が精神的な余裕を生みます。
やってはいけない対策
老後直前・老後期に多い失敗例も知っておきましょう。
① 高利回りをうたう商品に手を出す
「今からでも間に合う」「年利10%以上」などの言葉には注意が必要です。
焦りが判断を鈍らせ、回復不能な損失につながるケースが少なくありません。
② よく分からないまま投資を始める
仕組みを理解しない投資は、下落時に必ず不安になります。
結果、最悪のタイミングで売却してしまうことも。
③ ひとりで悩み続ける
老後資金の悩みは家族にも相談しにくく、孤立しがちです。
しかし、情報不足のまま決断することが最大のリスクになります。
FP視点のアドバイス
FPとして60代以降の相談で必ずお伝えしているのは、次の3点です。
①老後資金に「正解額」はない
必要額は家族構成・住居・健康状態で大きく変わります。
②不安の正体は「分からないこと」
現状を数値化するだけで、気持ちが大きく楽になる方がほとんどです。
③60歳からでも選択肢は複数ある
何もしないことが、実は最大のリスクです。
老後資金対策は早く始めるほど有利なのは事実ですが、遅すぎるということはありません。
大切なのは「今の自分に合ったやり方」を知り、行動することです。
もし「何から始めればいいか分からない」「自分の場合はいくら必要か知りたい」と感じたら、一度専門家に相談してみてください。
数字と選択肢を整理するだけで老後への見え方は大きく変わります。
