「貯金はどれくらい残して、投資にどれくらい回すべき?」
これはFP相談で最も多い質問の一つです。
SNSや書籍では「貯金7割・投資3割」「生活費の半年分は現金」など様々な数字が語られますが、それをそのまま当てはめて失敗するケースも少なくありません。
本コラムでは割合に「正解」がない理由と、年代・リスク許容度に応じた考え方などを分かりやすく解説します。
貯蓄と投資の割合に正解はあるのか
結論から言うと、貯金と投資の割合に万人共通の正解はありません。
理由はシンプルで、家計の前提条件が人によってまったく違うからです。
例えば以下のような要素だけでも、適正な割合は大きく変わります。
・年齢、家族構成(独身/子育て世帯)
・雇用の安定性(会社員・派遣社員・公務員・自営業)
・収入の増減リスク
・住宅ローンや教育費の有無
・投資経験の有無やリスク許容度
「投資は早く始めた方がいい」というのは事実ですが、生活防衛資金を削ってまで投資比率を高めるのは本末転倒です。
大切なのは「何%か」ではなく、今の自分にとって適正な配分かどうかなのです。
貯蓄と投資について年代別の考え方
20〜30代:投資比率を高める時期
収入が安定し始め、時間という最大の武器を持つ世代です。
生活防衛資金:生活費3〜6か月分
余剰資金:積立投資中心に活用
この年代は「貯金100%」よりも、少額でも投資に慣れることが重要です。
積立投資を継続することで相場が崩れてもカバーしやすい時期です。
ただし転職・結婚・出産などライフイベントが多いため、現金ゼロはNGです。
40代:バランス重視の時期
教育費・住宅ローンなど支出がピークを迎えやすい世代です。
貯金:近い将来の支出に備える
投資:老後資金づくりを本格化。リスクをとってもよい時期
「増やす」と「守る」の両立がテーマ。
無理な比率よりも家計を圧迫しない配分にすることが投資を長続きさせることできるポイントです。
50〜60代:守りを意識する時期
老後が現実的な期間に入ります。
貯金:数年以内に使うお金を確保
投資:リスクを抑えた運用を心掛ける
この年代で投資比率を上げすぎると、下落時に取り戻す時間がありません。
「増やす投資」から「減らさない運用」へ意識を切り替えることが大切です。
リスク許容度の考え方
リスク許容度とは、価格変動にどこまで耐えられるかという心理面・家計面の余力です。
例えば同じ余剰の資産1,000万円でも、
・900万円を貯金、100万円を投資 →相場が崩れて下落しても冷静でいられる
・100万円を貯金、900万円を投資 → 暴落時には気になって眠れない
という状況になる可能性が高いです。
では、適切な割合はどのようなものでしょうか?
自分のリスク許容度を測る簡単な質問
・資産が一時的に20%減っても投資を続けられるか?
・投資した資金が無くなっても生活に影響が出ないか?
・家族に説明して納得してもらえるか?
これらに「YES」と言えない場合、投資比率が高すぎる可能性があります。
FPの結論
FPとしての結論は明確です。
貯金と投資の割合は「安心して続けられるか」で決めるべきです
数字に縛られるより、次の順番を守ることが重要です。
①生活防衛資金を確保する
②近い将来使うお金は貯金で管理
③余剰資金だけを投資に回す
④メンタルが崩れない割合を維持する
この順番を飛ばして「利回り」や「流行」だけで割合を決めると、失敗しやすくなります。
自分に合う割合の見つけ方
最後に、実践的なステップを紹介します。
ステップ1:支出を3つに分ける
・生活費
・近い将来の支出(教育費・車・旅行)
・使う予定のない余剰資金
ステップ2:余剰資金の一部から投資を始める
最初は余剰資金の1〜2割でOK。慣れたら徐々に増やしていきましょう。
ステップ3:定期的に見直す
年齢・収入・家族構成が変われば、最適な割合も変わります。
1年に1度は資産の棚卸しを行い、過不足がないかチェックしましょう。
まとめ
「貯金◯%・投資◯%」という正解を探すより、
「自分と家族が安心できる配分か」を基準に考えることが長期的な資産形成の近道です。
もし「自分の場合はどうなのか分からない」と感じたら、
数字だけでなく家計全体を見た判断ができるFPへの相談も有効な選択肢です。
貯蓄と投資は無理のない範囲で行いましょう。
