「NISAって、結局いくら投資するのが正解なの?」
これは、FPとして非常に多く受ける質問のひとつです。
SNSやネット記事では
「毎月3万円」「年間120万円満額が正解」
といった情報が目につきますが、それを見て
「自分もそこまでやらないとダメなのでは?」
と不安になっている方も少なくありません。
結論から言うと、
NISAの投資額に「万人共通の正解」はありません。
大切なのは、
年収・家計・ライフステージに合った金額を無理なく続けることです。
この記事では、FPの視点から
・投資額に正解がない理由
・年収別の現実的な投資額目安
・生活を圧迫しない考え方
をわかりやすく解説していきます。
投資額に正解はあるのか?
まず押さえておきたいのは、
NISAは「いくら投資すれば成功」という制度ではないという点です。
NISAはあくまで
「投資で得た利益が非課税になる枠」にすぎません。
・満額使わなければ損
・少額だと意味がない
こうした考え方は、実は大きな誤解です。
月5,000円でも、1万円でも、
長く続けられる金額であれば立派なNISA活用です。
反対に、
無理をして高額を投資すると、
相場が下がったときに不安が大きくなり、
途中でやめてしまう原因になります。
投資額の正解は、
「いくらなら不安なく続けられるか」
ここにあります。
年収別の現実的な投資額目安
では、実際にどれくらいが現実的なのでしょうか。
ここでは一般的な家計を想定した目安を紹介します。
年収300万円台の場合
・月5,000円〜1万5,000円
・年間6万円〜18万円程度
この層では、
まずは投資に慣れることが最優先です。
貯金とNISAのバランスを崩さず、
「続けられた」という成功体験を積むことが重要です。
年収400〜500万円台の場合
・月1万円〜3万円
・年間12万円〜36万円程度
家計にある程度の余裕が出始めますが、
住宅費・教育費などの固定費も増えやすい層でもあります。
「毎月必ずこの金額」と決めすぎず、
ボーナス月で調整するなど柔軟さがポイントになります。
年収600〜700万円台の場合
・月3万円〜5万円
・年間36万円〜60万円程度
老後資金や将来への備えを
じっくりと取り組める層です。
ただし、
「余裕がある=限界まで投資していい」
ではありません。
生活水準を落とさず続けられるかが判断基準です。
年収800万円以上の場合
・月5万円〜10万円以上
・年間60万円〜120万円程度
この層はNISA枠を比較的使いやすい一方、
NISAだけに頼らず
他の投資や資産とのバランスも重要になります。
NISAは資産形成の一部、
という位置づけで考えることが大切です。
生活を圧迫しない考え方
投資額を決めるときに、
必ず意識してほしいのが生活防衛資金です。
生活防衛資金とは、
病気・失業・急な出費に備えるためのお金で、
一般的には生活費の3〜6か月分が目安とされます。
この資金を確保せずにNISAへ回してしまうと、
いざという時に
「売りたくないタイミングで売らざるを得ない」
という事態に陥ります。
NISAは
余剰資金で行うもの
という大原則を忘れてはいけません。
無理な投資が失敗を招く理由
FPの立場で見てきた中で、
NISAで失敗したと感じている人の多くは、
「金額の設定」に無理があります。
・生活費を切り詰めすぎた
・貯金がほとんどなくなった
・相場下落時に強い不安を感じた
こうした状態では、
冷静な判断ができなくなります。
投資は
メンタルが9割と言われるほど、
感情の影響を受けやすい行為です。
無理な金額は、
そのまま「不安」と「後悔」につながり、
結果的に失敗体験になってしまいます。
自分の適正額を知る方法
では、自分に合ったNISAの投資額は
どうやって見つければいいのでしょうか。
FPが必ず確認するポイントは次の5つです。
・毎月の収支(黒字額はいくらか)
・貯金額と生活防衛資金
・近い将来に使う予定のお金
・投資期間(いつまで運用するか)
・値下がり時にどこまで耐えられるか
この整理をせずに
「年収が〇〇だからこの金額」
と決めてしまうのは非常に危険です。
NISAは、
人と比べる制度ではありません。
自分の人生設計に合った金額を
無理なく、長く続けること。
それが最も堅実で失敗しにくい活用方法です。
「今の投資額で本当に大丈夫?」
「増やしたほうがいいのか、減らすべきか迷っている」
そう感じている方は、
一度立ち止まって家計と目的を整理することが大切です。
NISAは
始めることより、続けられる設計ができているか
ここで結果が大きく変わります。
