ライフプランニングの始め方~人生設計で老後資金と安心をつくる方法~

ライフプランニングの始め方~人生設計で老後資金と安心をつくる方法~

著者紹介

代表取締役 武田 拓也

ファイナンシャルプランナー(AFP)/社会福祉士/高校教諭1種「福祉」
代表取締役 武田 拓也

元「高校教員」、現役「専門学校講師」
資産運用歴18年の実力派ファイナンシャルプランナー。
失敗談や成功例を実体験に基づいてお伝えしています。
社会福祉士としてNPO法人の理事や大学校友会の理事長など地域福祉にも取り組み中。
高校や大学、事業団体などで年100回以上の講演を実施。
趣味:人の話を聞くこと、資産運用(株式投資、不動産投資、投資信託、その他)

更新日:2025年9月2日

人生100年時代、老後資金や教育費、介護費用の不安を抱える人は少なくありません。

ライフプランニング(人生設計)は、将来のライフイベントに必要な資金を逆算し、安心できる未来をつくるための重要な方法です。
本記事では、結婚や出産から老後の生活まで、ライフプランを立てる手順と資産形成のポイントをわかりやすく解説します。

 

1.ライフプランニングとは?

1-1 人生設計の基本と重要性

ライフプランニングとは、自分の将来を見据えて「どのように暮らしていきたいか」「どんなイベントが待ち受けているのか」を具体的に考え、資金計画を立てることを指します。

単なる貯金や投資とは違い、結婚・出産・住宅購入・子どもの教育・老後の生活など、人生における大きな出来事(ライフイベント)を見据えて必要な資金を逆算して準備する点が特徴です。

計画なしにその時々で対応すると、結婚資金が足りない、教育費で家計が逼迫する、老後資金が全く不足しているといった問題が起こりやすくなります。

特に人生100年時代では「長生きリスク」に備えることが欠かせません。

ライフプランニングは将来の安心だけでなく、今の生活を楽しむための指針にもなります。

1-2 人生100年時代に必要な考え方

かつては「定年まで勤め上げれば安泰」という時代でしたが、現代は年金だけで十分な生活を送ることが難しくなっています。

退職後に20年以上の生活費が必要となるケースも珍しくなく、準備が不十分だと老後の生活が一気に不安定になります。

そのため、若いうちからライフプランを立て、長期的に資産を形成していくことが重要です。

ポイントは「イベントごとに必要な金額を見積もること」と「どのくらいの期間で準備できるかを把握すること」です。

例えば、結婚や出産は数年以内に発生することが多いため短期的な資金準備が必要ですが、子どもの教育費や老後資金は10年以上の時間をかけて積み立てることが可能です。

こうした時間軸を考慮して、効率的に資産を分散して運用することが、人生100年時代を安心して生き抜くための基本姿勢といえます。

2.ライフイベントと必要なお金

2-1 結婚・出産にかかる費用

結婚と出産は、多くの人が経験する大きなライフイベントです。

とある調査によれば、結婚式の平均費用は約400万円。

そのうち親からの援助やご祝儀で賄える部分もありますが、自己負担分として200〜250万円は準備しておきたいところです。

出産に関しても、出産育児一時金などの公的補助はあるものの、検診費用やベビー用品の購入など自己負担額は少なくありません。

特に出産後は生活スタイルが大きく変わり、育児休業による収入減や出費増加が同時に発生します。

こうした変化を見越して、結婚や出産のタイミングに備えた資金準備が必要です。

準備期間は数年以内であるケースが多いため、低リスクかつ流動性の高い金融商品や定期預金を活用するのが現実的といえます。

2-2 子育て・教育費の目安

子どもが成長するにつれて教育費が大きな負担となります。

文部科学省の調査によれば、公立小学校から大学まで進学した場合でも約1,000万円、すべて私立に通わせる場合は2,000万円を超える費用が必要です。

特に大学進学時には初年度納付金として150〜300万円ほどが一度に必要となるため、事前の準備が欠かせません。

教育資金は比較的長期的な準備が可能なため、学資保険や積立型の投資信託などを活用するのが有効です。

また、教育費は子どもの人数によっても大きく変わるため、早めにライフプランを作成し、どのタイミングでどれだけの資金が必要になるのかを可視化することが重要です。

教育費の備えは「始めるのが早ければ早いほど安心」と心得ておきましょう。

3.老後と介護に備える資金計画

3-1 老後資金の必要額

老後に必要な生活資金は「夫婦で月25〜30万円程度」といわれています。

これは生活水準や住居形態によって変動しますが、仮に30年の老後を想定すると最低でも9,000万円近い生活費がかかる計算になります。

もちろん年金が一定額支給されますが、平均的な受給額は夫婦合算でも月20万円程度に留まることが多く、差額は自助努力で補わなければなりません。

この不足分が「老後資金」と呼ばれるものです。

特に住宅ローンを完済できていない場合や、子どもの教育費と老後資金の準備が重なる時期には、計画的な積立や資産運用が不可欠です。

老後資金は長期的に準備する必要があるため、インフレリスクを考慮した投資信託や債券などの低リスク商品を組み合わせ、長期で運用するのが効果的です。

3-2 介護費用とその準備方法

介護は誰にでも起こり得るライフイベントでありながら、必要額を想定している人は少ないのが実情です。

生命保険文化センターの調査によれば、介護にかかる費用は平均で約500万円、月額約8万円が目安とされています。

期間は平均で約4年半ですが、10年以上に及ぶケースもあり、長期化すればするほど家計への負担は大きくなります。

介護費用は「突発的に発生する可能性がある」ため、すぐに引き出せる流動性の高い資産や、介護保険の利用も検討すべきです。

また、将来的に介護施設を利用する場合は入居一時金として数百万円が必要となることもあるため、老後資金とは別に準備を進めるのが望ましいでしょう。

早い段階で「介護に備える資金枠」を設定することが安心につながります。

4.資産形成の具体的な方法

4-1 預貯金・保険の限界

かつては「貯金さえしておけば安心」という時代もありましたが、現在は低金利の影響で銀行に預けても資産はほとんど増えません。

例えば100万円を普通預金に10年間預けても、利息は数千円程度しかつきません。

インフレによって物価が上昇すれば、実質的な資産価値はむしろ目減りしてしまいます。

また、生命保険や学資保険も保障機能はありますが、運用益は限定的で、老後資金のメイン準備手段としては力不足です。

預貯金や保険は「安全資産」として一定額は必要ですが、これだけに頼るのはリスクが大きいと認識しておくべきです。

4-2 投資信託・債券などの選び方

資産形成を効率的に行うためには、投資信託や債券といった金融商品をバランスよく取り入れることが重要です。

投資信託は少額から分散投資が可能で、長期的な資産形成に適しています。

特に「NISA」や「iDeCo」といった税制優遇制度を活用することで、非課税で運用益を得ることができ、将来の資産形成に大きく役立ちます。

一方、債券は株式に比べてリスクが低く、安定した利息収入が期待できるため、教育費や老後資金といった確実に必要となる資金の準備に向いています。

重要なのは、自分のライフイベントのタイミングと照らし合わせて商品を選ぶこと。

短期的に必要な資金は流動性を重視し、長期的な資金は積立型投資で増やすというように、目的別に運用先を分けることが失敗しないコツです。

5.ライフプランニングの実践ステップ

5-1 家計管理と積立の始め方

ライフプランニングを実践する第一歩は、現状の家計を正しく把握することです。

収入と支出を洗い出し、毎月の固定費をどこまで削減できるかを確認します。

最近では家計簿アプリを使えば、自動的に支出がカテゴリごとに整理され、可視化しやすくなります。

無駄な支出を削ったうえで、余剰資金を「短期・中期・長期」に振り分け、少額からでも積立を始めることが重要です。

例えば、旅行や車の購入など数年以内に必要なお金は安全資産で積み立て、

教育費や老後資金といった10年以上先の資金は投資信託などで長期運用する、といった具合です。

最初は月1万円からでも構いません。「継続して積み立てること」が最大の成功要因となります。

5-2 自分らしい人生設計を叶えるコツ

ライフプランニングの目的は「お金を増やすこと」そのものではなく、「自分らしい人生を実現すること」です。

例えば、早期リタイアを目指すのか、家族とゆとりある生活を送りたいのか、海外移住を夢見るのか。

人によって理想の人生像は異なります。

そのため、まずは「自分が大切にしたい価値観」を明確にし、その実現に必要なお金を逆算して準備することが重要です。

また、ライフプランは一度立てたら終わりではありません。

転職・結婚・出産・病気など、環境の変化に合わせて定期的に見直すことで、計画が現実に即したものになります。

プロのファイナンシャルプランナーに相談するのも有効な手段です。

「自分らしい人生」を叶えるためには、数字と夢を結びつける具体的な行動が不可欠なのです。

2022/8/15