「想定外」を想定する投資家の考え方
【はじめに】市場は常に不確実
株式市場において「急落」はいつ起こるか分かりません。
リーマンショック、チャイナショック、コロナショック、ウクライナ侵攻、そして為替急変による日経平均の乱高下。
過去の歴史が教えてくれるのは「暴落は忘れた頃にやってくる」ということです。
上昇局面では多くの投資家が強気になり、ポートフォリオがリスク資産に偏りがちになります。
しかし、急落はその油断を狙ったように訪れます。
このコラムでは株価急落に備えるための10の具体策を紹介します。
① 現金ポジションの確保
最も基本的で効果的な防御策が「現金比率を高める」ことです。
相場が過熱しているときこそ、キャッシュを一定割合持つことで急落時の「買いの余力」を確保できます。
現金は「攻めるための防御資産」でもあります。
目安としては資産全体の10〜30%を現金またはMRFなど流動性の高い資産で保有すると安心です。
どうしても攻めたいという人はレバレッジの効いたETFを利用することで攻めながらも現金を確保する方法もあります。
② セクター分散と地域分散
株式投資の基本は分散です。
急落は特定のセクターをきっかけに起こることが多く、たとえばハイテクバブル崩壊やリーマンショックでは金融・ITセクターが直撃を受けました。
業種別・国別・通貨別に分散しておくことで急落当初のリスクを緩和することができます。
具体的には日本株・米国株・欧州株・新興国株にバランスよく配分し、さらに不動産投資信託(REIT)や金などの実物資産を組み合わせると良いでしょう。
ただ、特定のセクターで発生した急落も影響が大きくなると世界全体へ波及し、世界同時株安となることがあります。
そのような大規模な急落の場合、株式全体が暴落する可能性があるので現物資産の不動産や金を保有することも一考です。
③ 防御銘柄(ディフェンシブ銘柄)を組み入れる
景気変動に左右されにくい「ディフェンシブ銘柄」は急落局面でも比較的安定した値動きを見せます。
代表的なセクターは医薬品、食品、通信、電力などの生活必需の分野です。
これらは業績が景気に連動しにくく、暴落時の資金逃避先として買われやすい傾向にあります。
攻守のバランスを取る上でポートフォリオの20〜30%程度を防御銘柄に配分しておくと安心です。
④ 利益確定ラインと損切りラインの明確化
投資家心理が最も乱れるのが「下落局面」です。
下がり始めても「もう少し待てば戻る」と判断を誤るケースも多くあります。
そのため、あらかじめ売却ルールを決めておくことが重要です。
たとえば、
-
含み益が50%を超えたら半分を利確する
-
購入価格から10%下がったら損切りする
といった明確な基準を設定しておくことで感情に左右されず冷静に対応ができます。
⑤ ヘッジ手段の活用(ETF・先物・オプション)
中上級者向けではあるが、下落に対して利益を得る手段を組み込むのも有効です。
たとえば、日経平均インバースETFやVIX指数連動ETFは相場急落時に上昇する特性を持ちます。
また、保有株の下落リスクを信用取引でヘッジする方法もあります。
「下がっても利益を出せるポジション」を一部持つことで心理的な余裕が生まれます。
ただし、インバースETFやVIX指数などは長期で保有していると手数料負けしてしまい損失が膨らんでいきますので
活用するのは短期間にとどめましょう。
⑥ 株主優待・配当(インカム)重視のポートフォリオ
暴落局面では株価が下がっても、安定した配当収入や株主優待があれば精神的な支えになることもあります。
特に日本企業では株主還元意識が高まっており、配当性向の高い高配当銘柄への資金シフトが起きています。
ただし、配当利回りだけでなく「将来性」や「キャッシュフロー」を確認して持続可能な企業を選ぶことが重要です。
⑦ バリュエーションを意識する
株価が割高になっているときほど、急落の衝撃は大きい。
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を確認し、適正水準を超えている場合はポジションを軽くする判断が必要です。
人気ではなく「価値」で買うという原則を守ることで、リスクを抑えつつリターンを狙えます。
⑧心理的耐性を高める
最後に最も重要なのは「心の準備」です。
急落時はSNSやメディアが恐怖を煽り、投資家の不安が連鎖的に拡大することがあります。
そうした時こそ、過去の暴落後の回復データを見返すことが有効です。
たとえばコロナショック後、日経平均は約3か月ほどでほぼ回復しました。
「暴落は終わりではなく通過点」と捉え、ルールに従う冷静さを持つことが成功の鍵です。
【まとめ】備えあれば、恐れなし
株価の急落は避けられませんが、備えることで恐れて投資の機会を逃すリスクを回避できます。
現金比率の調整、分散、ディフェンシブ銘柄、損切りルール、ヘッジ手段など、これらはすべて「予防接種」のようなものです。
不確実性を排除するのではなく、「不確実性と共存する姿勢」を持つことが成功する投資家への第一歩です。
次の急落は、誰にも予測できません。
しかし、「備えていた人」と「油断していた人」とでは同じ暴落でも結果はまるで異なります。
市場の波を恐れず、冷静に構えましょう。
株式投資では嵐を避けることではなく、嵐の中で生き残る技術を磨くことが大切です。
株式市場から退場せずに済むように、しっかり準備をしておきましょう。
