退職金を活用して老後を豊かに過ごす方法【大阪FP】

退職金を活用して老後を豊かに過ごす方法【大阪FP】

著者紹介

代表取締役 武田 拓也

ファイナンシャルプランナー(AFP)/社会福祉士/高校教諭1種「福祉」
代表取締役 武田 拓也

元「高校教員」、現役「専門学校講師」
資産運用歴18年の実力派ファイナンシャルプランナー。
失敗談や成功例を実体験に基づいてお伝えしています。
社会福祉士としてNPO法人の理事や大学校友会の理事長など地域福祉にも取り組み中。
高校や大学、事業団体などで年100回以上の講演を実施。
趣味:人の話を聞くこと、資産運用(株式投資、不動産投資、投資信託、その他)

「貯める」から「増やす」へ。お金を働かせる時代

【はじめに】退職金は「第二の人生資金」

日本人の平均退職金は、おおよそ1,000万円〜2,000万円ほどです。

長年の勤続の成果として受け取るこの大金は、多くの人にとって「人生で最後にまとまって手に入るお金」です。

しかし同時に、その使い方を間違えると老後資金が想定より早く底をつくリスクもあります。
このコラムでは投資初心者でも安心して実践できる「退職金の上手な運用方法」をわかりやすく解説します。


1. まずは現状を把握する「老後資金の見える化」

老後資金の活用で最初にやるべきは「お金の全体像を把握する」ことです。
以下の3つのステップで整理しましょう。

  1. 必要な生活費を算出
     老後に受け取れる年金は平均月22万円前後です。老後の生活費は趣味や旅行を楽しむ場合は月30万円程度を見込むと安心です。

  2. 年金収入を確認
     ねんきん定期便などで自分と配偶者の年金受取額を確認します。例えば夫婦で月20万円受け取れる場合、月30万円の生活には10万円の不足が生じます。

  3. 不足分×想定年数=必要老後資金
     月10万円不足×30年(60歳〜90歳)=3,600万円
     これが「退職金+貯蓄」でまかなうべき資金の目安です。


2. 「貯める」だけでは足りない理由

かつては退職金を銀行預金や定期預金に預けておけば利息で生活を支えることができました。しかし、現在の金利は0.1%程度です
仮に退職金2,000万円を年0.1%で預けても、1年の利息はわずか2万円
です。

一方で年2%程度の物価上昇(インフレ)が続けば実質的な資産価値は減少します。
「貯める」だけではお金が「目減りする時代」になりました。

だからこそ退職金の一部を「守りながら増やす運用」に回す必要があります。


3. 退職金の使い方を3つの箱に分ける

退職金を受け取ったら、まず「3つの資金」に分けて管理するのが賢明です。

資金の目的 金額の目安 主な使い道
①生活資金 2〜3年分の生活費 普通預金で確保
②安心資金 500万円前後 医療・介護・リフォームなど予備費
③運用資金 残りの資産 投資信託・債券・不動産など

こうして「生活の安定」と「資産の成長」の両立を図ります。
すべてを投資に回すのではなく「使う・守る・増やす」のバランスを取るのがポイントです。


4. 投資初心者でも始めやすい運用方法5選

① 投資信託(バランス型ファンド)

少額から始められ、プロが分散投資を行う「バランス型ファンド」は初心者にもおすすめの選択肢です。

株式・債券・REIT(不動産)などを組み合わせてリスクを抑えながら安定したリターンを目指します。
期待利回り:年3〜5%程度

② つみたてNISA

2024年から「新NISA」に制度が変わり非課税で運用できる上限が大幅拡大しました。

退職後も長期で運用できるため老後の「資産形成」に適しています。
→ 少額からコツコツ積み立てるのがポイントです。

③ 個人向け国債

元本保証でありながら変動金利型ならインフレにある程度対応が可能です。
「リスクを取りたくない」「投資は不安」という方に最適です。
→ 利回りは低いですが安全性は抜群。

④ 社債(会社が発行している債券)

国債よりも金利が高いのが特徴です。価格の変動がなく安定した利息が半年おきに受け取れる社債もあります。
→ 期待利回り:年1〜6%程度

⑤ 退職金を活用した不動産投資

退職金の一部を利用して区分マンションや中古戸建を購入し、家賃収入を得る方法もあります。
毎月の家賃で安定収入を確保しつつ、相続対策にもつながります。
ただし空室・修繕・金利リスクがあるため専門家のサポートが必須です。

弊社ではさまざまな資産運用について情報提供を行っています。

必要があればいつでもご連絡ください。


5. 投資で失敗しないための3つの鉄則

鉄則① 一括投資は避ける

退職金のような大金を一度に投資へ回すのは危険です。

相場の変動リスクを避けるため「分割して時期を分けて投資する」ドルコスト平均法を活用しましょう。

鉄則② リスクを分散する

「株式だけ」「不動産だけ」といった偏った投資は避けましょう。
複数の資産クラス(株・債券・不動産・現金)に分散させることで損失を抑えつつ安定した運用が可能になります。

鉄則③ 専門家に相談する

退職金運用は金額が大きい分、失敗すると取り返しがつきません。
ファイナンシャルプランナー(FP)やIFA(独立系アドバイザー)に相談して、自分に合ったリスク許容度を見極めましょう。


6. 老後を豊かにする「お金の使い方」

退職金は「守る」だけでなく「自分や家族の幸せのために使う」ことも大切です。

  • 趣味や旅行などの自己投資

  • 子や孫への教育資金の支援

  • 社会貢献や寄付活動

  • 終活・相続準備(遺言書、家族信託など)

人生100年時代、単なる節約ではなく「どう生きたいか」を中心にお金を使うことが真の「豊かな老後」をつくります。


7. 退職金運用のシミュレーション例

運用方法 想定利回り 元本2,000万円を20年間運用した場合
預金(0.1%) 0.1% 約2,040万円(ほぼ増えず)
投資信託(3%) 3% 約3,610万円
バランス運用(4%) 4% 約4,380万円

※複利計算・税引前
このように、年3〜4%の運用でも20年で約1.5〜2倍に資産を増やすことが可能です。
もちろん元本割れのリスクもありますが、長期・分散・積立を心がければ安定的な資産形成が期待できます。


【まとめ】退職金は「安心」と「挑戦」のバランスが鍵

目的 対応策
安心して暮らす 預金・国債・年金受取で基礎生活を守る
資産を増やす 投資信託・債券・不動産でインフレに備える
将来に備える 相続・信託・保険などで家族を守る

退職金は単なる「ご褒美」ではなく、これからの人生を豊かにデザインするための原資です。
「守りながら増やす」「安心しながら挑戦する」このバランスこそが退職金を最大限に活かす鍵となります。


最後に

老後のお金に不安を感じるのは当然のことです。
しかし、正しい知識と計画的な行動で、その不安は「希望」に変わります。
退職金をただの預金で終わらせず、自分らしい人生を支える「働くお金」として育てていきましょう。

2025/11/9