「安定収入が魅力」の裏に潜むリスクを知る
不動産投資は「家賃収入が得られる」「安定した資産になる」といった魅力から、近年ではサラリーマンや士業の投資家にも人気があります。
しかし、「安定」と思われがちな不動産投資にも数多くの落とし穴が存在します。
特に投資初心者は表面的な利回りや営業トークに惑わされず、冷静にリスクを見極めることが大切です。
この記事では、投資初心者が不動産投資を始める際に「気をつけるべきポイント」をわかりやすく解説します。
①「利回り」だけで判断しない
営業担当者の説明で「利回り8%」「高収益物件」と言われると、つい魅力的に感じてしまうものです。
しかし、表示されている利回り(表面利回り)は実際の収益を反映していません。
例えば、
・空室リスク
・修繕費・管理費
・固定資産税
・ローン金利
などのコストを差し引いた「実質利回り(ネット利回り)」を確認することが重要です。
初心者が陥りがちなのは「数字だけで良し悪しを判断する」ことです。
利回りを見る際は家賃の安定性と将来の維持費を必ずセットで考えましょう。
②「立地」の重要性を過小評価しない
不動産の価値を決める最大の要素は「立地」です。
どんなに新しい建物でも需要のないエリアでは入居者がつかず、空室リスクが高まります。
ポイントは次の3つです。
・駅やバス停からのアクセス
・生活利便性(スーパー、病院、学校など)
・将来の人口動向(人口減少エリアは要注意)
「築年数」よりも「場所」が資産価値を左右することを覚えておきましょう。
特に投資初心者は理解できるエリアから始めるのがおすすめです。
③「ローン返済」を甘く見ない
不動産投資では多くの人がローン(融資)を利用します。
しかし、満室経営が続くことを前提に計画すると空室や家賃下落で返済が苦しくなるリスクがあります。
安全ラインとしては、空室率10%程度を想定しても返済が続けられるような資金計画を立てること。
また、変動金利型のローンを選ぶ場合は金利上昇時の返済額もシミュレーションしておきましょう。
④「管理会社任せ」にしすぎない
「管理会社が全部やってくれる」と安心してしまう初心者も多いですが丸投げは危険です。
管理会社によっては家賃設定や修繕対応が杜撰で、結果的に空室やコスト増に繋がることもあります。
管理委託契約を結ぶ前には以下をチェックしましょう。
・管理委託料の割合(家賃の5%程度が目安)
・空室時の対応・広告出稿体制
・修繕、退去時の費用負担ルール
定期的に報告を受け、自分でも収支状況を把握する意識が大切です。
⑤「節税効果」だけを目的にしない
不動産投資のセールストークでよくあるのが「節税になります!」という言葉です。
確かに減価償却費や経費計上により、所得税・住民税の節税効果は期待できます。
しかし、本業の所得が低い人が節税を目的に始めても、うまくいかないケースが多いです。
節税は「副次的なメリット」であり、目的はあくまで「長期的な資産形成」。
「節税のために買う」のではなく「利益の出る物件を買った結果、節税にもなる」という順序を意識しましょう。
⑥「将来の修繕費」を見落とさない
築年数が経過すると、外壁・屋根・配管などの修繕費が発生します。
中古物件の場合はすぐに大規模修繕が必要になることもあります。
修繕積立金を物件収支に組み込まずに購入すると、後々のキャッシュフローがマイナスに陥ります。
中古物件の場合は投資判断時に「修繕履歴」や「今後の修繕予定」を必ず確認しましょう。
不動産会社が所有している物件を購入する場合は瑕疵担保責任があるため、購入して初年度に設備に関する修繕費用が発生することは基本的にはありません。
⑦「出口戦略」を考えておく
不動産投資は「買って終わり」ではなく「売って終わり」です。
出口戦略を考えずに購入すると、将来売却したいときに買い手がつかずに損失を被るリスクがあります。
・いつ、どの価格帯で売却を想定しているのか
・売却時にローン残債が上回らないか
・地価や再開発の動向
これらをシミュレーションして「出口から逆算する投資」を意識することが成功の鍵です。
⑧「業者の営業トーク」に注意する
不動産投資はプロと初心者の情報格差が大きく、営業マンによっては自社に有利な条件を提示してくることもあります。
「年収〇〇万円ならローンが通ります」「節税で年100万円戻ってきます」といった甘い言葉には要注意です。
複数の業者を比較して自分の判断基準(利回り・エリア・リスク)を持って決断するようにしましょう。
どうしても判断に迷う時には中立の立場にある専門家などに相談するのも1つの選択肢です。
⑨「キャッシュフロー表」を作る
不動産投資の収支は家賃−経費−ローン返済の差で決まります。
投資初心者ほど、この「キャッシュフロー表」を作らずに物件を購入してしまいがちです。
・家賃収入
・管理費・修繕費
・固定資産税・火災保険
・ローン返済額
これらを一覧にして年間・月間の手残りを計算することで、投資判断が一気に明確になります。
数字を「見える化」することが最も重要なリスク管理です。
【まとめ】不動産投資は「数字と現実を見極める力」がカギ
不動産投資は、正しく学び、慎重に判断すれば長期的に安定した収益を生む魅力的な資産運用です。
しかし、初心者が気をつけるべきことは「感情や営業トークに流されない」こと。
・表面利回りではなく実質の収益を見る
・立地と空室リスクを冷静に評価する
・出口戦略と修繕費を計画に入れる
これらを守れば不動産投資は「不安定な副業」ではなく「堅実な資産形成の柱」へと変わります。
焦らず一歩ずつ、知識と経験を積み重ねていきましょう。
