「安全そうに見える」債券投資のリスクとは?
株式投資に比べて「値動きが小さい」「安定して利息が得られる」とされる債券投資。
確かに、債券はリスクを抑えたい投資初心者にとって魅力的な資産です。
しかし「安全=リスクゼロ」ではありません。
債券にも商品によっては金利変動・為替・発行体の信用といった複数のリスクが存在します。
このコラムでは債券投資をこれから始める投資初心者が知っておくべき注意点をわかりやすく解説します。
①債券とは?「お金を貸して利息をもらう」仕組み
まずは債券の基本構造を理解しましょう。
債券とは国や企業などが「資金を借りるために発行する借用証書」です。
投資家は発行体にお金を貸し、その見返りとして
⑴利息(クーポン)
⑵償還時の元本返済
を受け取ります。
代表的な債券には以下のような種類があります。
・国債(日本国債)
・社債(企業が発行)
・外債(ドル、ユーロなど外貨建て)
②「金利が上がると債券価格が下がる」ことを理解する
初心者が最も誤解しやすいのが金利と債券価格の逆相関です。
金利が上昇すると既に発行された低利回りの債券は魅力が下がり、価格が下落します。
例えば年利1%の債券を持っているときに、市場金利が2%に上がると他の投資家はより高利回りの新しい債券を買いたがります。
結果として1%債券は値下がりします。
このように債券投資では商品とタイミングによって「元本割れリスク」が存在するのです。
③「満期まで保有」することでリスクを抑える
金利変動による価格下落は途中で売却する場合のみ損失として確定します。
満期まで保有すれば発行体が破綻しない限り、元本と利息を受け取ることができます。
したがって債券投資では「短期売買」よりも「満期保有」の発想が大切です。
長期運用の一部として安定したキャッシュフローを得る目的で活用すると効果的です。
④「信用リスク(デフォルトリスク)」を見逃さない
債券で最も重要なのが発行体の信用力です。
国や企業が経営不振・財政難に陥ると元本や利息の支払いが滞る、つまりデフォルト(債務不履行)が発生する可能性があります。
・日本国債や米国債:信用度が高く安全性が高い
・企業の社債:企業の格付け(AAA〜Cなど)で信用度を判断
高利回りの社債は裏を返せば「リスクが高い」ことの証明です。
初心者はまず国債や格付けの高い社債から始めるのが無難です。
⑤「外貨建て債券」は為替リスクに注意
ドル建て・ユーロ建てなどの外貨建て債券は円より高い利回りを得られる一方で、為替変動リスクが発生します。
たとえば米ドル建て債券を購入した際に、
・円安(150円→160円)になれば、円換算で利益
・円高(150円→140円)になれば、円換算で損失
になります。
金利差で得た利益を為替変動で失ってしまうケースも多いため「為替の影響」を含めたトータルリターンで考えることが重要です。
⑥「利回りの数字」だけで判断しない
債券のパンフレットには「年利3.5%」「高利回り社債」など魅力的な言葉が並びます。
しかし、利回りが高いほどリスクも高いのが債券の原則です。
高利回り=低格付け=デフォルトリスクが高い傾向があります。
また外貨建ての場合は「為替リスクを加味した実質利回り」を確認する必要があります。
「なぜ高利回りなのか?」の理由を理解することが初心者にとって最も重要なリスク管理です。
⑦「流動性リスク(売りたいときに売れない)」を考慮する
株式と違って債券市場は取引量が少なく、個人投資家がすぐに売買できないケースがあります。
特に外国債券や企業の社債は売却時に想定より安くなる可能性もあります。
投資する際は、
・満期まで保有する余裕があるか
・緊急時に現金化しやすいか
を事前に確認しておきましょう。
⑧「分散投資」でリスクを抑える
債券は「安定資産」とはいえ、1本に集中するとリスクが偏ります。
初心者は「日本国債、外国債、社債をバランスよく組み合わせる」といった分散投資でリスクを抑えるのが基本です。
ただし、投資信託の「債券ファンド」はリスクは低いですが手数料が高いために資産が減る可能性があります。
そのため投資初心者は特に注意が必要です。
⑨「インフレリスク」にも目を向ける
債券は一定の利息収入を得られますがインフレ(物価上昇)には弱いという特徴があります。
例えば、金利1%の債券を持っていても物価が年3%上昇すれば「実質的な価値」は目減りします。
そのためポートフォリオ全体で株式や不動産など「インフレに強い資産」と組み合わせることが大切です。
【まとめ】
債券投資は安定した収入を得られる魅力的な資産運用の手段ですが、「安全だから」という理由だけで選ぶのは危険です。
初心者が気をつけるべきポイントは以下の通りです。
・金利上昇=債券価格下落の仕組みを理解する
・満期まで保有する前提で計画を立てる
・発行体の信用度と利回りのバランスを確認する
・外貨建てや高利回りの債券は慎重に
・投資信託の債券ファンドは避ける
債券投資は「攻め」ではなく、「守り」の資産運用です。
リスクを理解した上で活用すれば、あなたのポートフォリオを安定させる強力なツールとなるでしょう。
