会社の売上を増やすために、新商品の開発や広告宣伝、営業活動の強化に取り組む企業は少なくありません。
もちろん、これらは重要な施策です。しかし、どれほど優れた商品や仕組みを用意しても、実際に顧客と向き合い、価値を届けるのは社員です。
持続的に売上を伸ばすためには、商品や設備への投資だけでなく、社員が前向きに働ける環境を整える「人への投資」が欠かせません。
その財源の一つとして検討したいのが内部留保の活用であり、活用方法の選択肢となるのが、余剰資金による資産運用です。
売上アップの出発点は「社員のモチベーション」
社員のモチベーションは、企業の売上と無関係ではありません。
意欲の高い社員は、自ら業務改善を考え、顧客への提案や対応にも積極的になります。
社内のコミュニケーションが活発になれば、商品やサービスの質も向上するでしょう。
その結果、顧客満足度が高まり、リピート購入や紹介、新規契約の増加につながります。
反対に、社員が「努力しても評価されない」「会社の将来が見えない」と感じている職場では、最低限の仕事だけをこなす傾向が強くなります。
離職者が増えれば、採用費や教育費も膨らみ、残った社員の負担も大きくなります。
社員のモチベーションを高める方法は、単純な賃上げだけではありません。たとえば、次のような取り組みが考えられます。
・業績に応じた賞与や報奨金
・資格取得費用や研修費用の補助
・企業型確定拠出年金など福利厚生の充実
・営業支援システムや業務効率化ツールの導入
・柔軟な勤務制度や休暇制度の整備
・社員の提案を事業に反映する仕組み
・適切な評価制度とキャリア形成支援
重要なのは会社が社員を単なる「人件費」として見るのではなく、将来の売上を生み出す資本として捉えることです。
社員への投資は一時的な費用ではなく、生産性や定着率、顧客満足度を高めるための経営戦略なのです。
人への投資の財源として内部留保を活用する
社員に還元したくても、「原材料費や人件費が上昇するなか、新たな支出を増やす余裕はない」と考える経営者もいるでしょう。
そこで確認したいのが、会社に蓄積されている内部留保です。
内部留保を活用する際は、まず現預金の残高や毎月の固定費、借入金の返済予定、納税資金、今後の設備投資計画などを確認し、事業の継続に必要な資金を確保する必要があります。
そのうえで、当面使用する予定のない余剰資金があるなら、ただ普通預金に置いておくだけでなく、会社と社員の成長につながる形で活用することを検討できます。
余剰資金を「資産運用」で働かせる
内部留保を活用する方法として、社員への直接的な還元や設備投資とともに検討したいのが法人による資産運用です。
預金は安全性や換金性に優れる一方、得られる利息には限りがあります。
そこで、当面使用しない余剰資金の一部を債券や投資信託などで運用し、会社の資金にも収益を生み出す役割を持たせます。
運用によって得た利益を、社員研修、資格取得支援、福利厚生、業績連動賞与などの原資に充てれば、会社の資産と社員の成長を結び付けることができます。
たとえば、余剰資金5,000万円のうち2,000万円を年4%で運用できた場合、税金や手数料を考慮しない単純計算では、年間80万円の収益になります。
これだけで大規模な賃上げを行うことは難しくても、資格取得支援や外部研修、福利厚生の充実などに活用することは可能です。
さらに余剰資金が大きい企業では、運用収益を人材投資へ継続的に振り向ける仕組みをつくることで、社員に「会社の成長が自分たちにも還元される」という実感を持ってもらえます。
資産運用は「本業を守ること」が大前提
もっとも、資産運用には価格変動や信用、為替、金利、流動性などのリスクがあります。利益を急ぐあまり、運転資金や納税資金まで投資に回してしまえば、本業の資金繰りを悪化させかねません。
法人が資産運用を行う際は、資金を次のように分けて管理することが大切です。
①日常の支払いに必要な運転資金
②納税や賞与、借入金返済など使い道が決まっている資金
③災害や売上減少に備える緊急予備資金
④数年間使用する予定のない長期の余剰資金
資産運用の対象とするのは、原則として4番目の「長期の余剰資金」です。近いうちに使う可能性のある資金は預金や短期の金融商品で管理し、長期間使わない資金については、投資先や満期を分散しながら運用します。
また、経営者個人の感覚だけで判断するのではなく、運用目的、対象商品、投資上限、許容損失額、換金時期などを社内ルールとして明確にしておく必要があります。会計処理や法人税への影響もあるため、税理士や金融の専門家と連携することも重要です。
「資金→社員→売上」の好循環をつくる
会社の成長には、一定の現預金を確保する守りの経営が必要です。しかし、必要以上に資金を眠らせているだけでは、新しい価値は生まれません。
余剰資金を適切に運用し、そこから得られた収益を社員の教育や福利厚生、働きやすい環境の整備へ還元する。
社員のモチベーションが高まれば、業務の質や生産性が向上し、顧客満足度と売上の増加につながります。
売上が増えれば、さらに人材へ投資できる余力も生まれます。
つまり、目指すべきなのは、単に資産運用で利益を得ることではありません。
内部留保を活用して会社の資金を育て、その成果を社員へ還元し、社員の力によって本業の売上を伸ばす。
この「資金・社員・売上」の好循環をつくることこそ、内部留保を未来の成長へ変える経営といえるでしょう。
内部留保の具体的な活用方法について、まずはご相談ください。

