地震や台風、豪雨などの災害は、いつ起こるか分かりません。
「非常食を買っているから大丈夫」と思っていても、「避難先を知らない」「家族との連絡方法を決めていない」「保険の補償内容を確認していない」という家庭は少なくありません。
防災で大切なのは、防災用品を集めることだけではなく、災害発生後も生活を立て直せるように準備しておくことです。
今回は、命と家計を守るために準備しておきたい8つのポイントを解説します。
1.自宅周辺の災害リスクを確認する
最初に確認したいのが、「自宅や勤務先には、どのような災害リスクがあるのか」です。
国土地理院のハザードマップポータルサイトでは、洪水、土砂災害、高潮、津波などのリスクを住所から確認できます。
自治体が公表している最新のハザードマップも併せて確認しましょう。
確認すべき項目は、次のとおりです。
①自宅の浸水想定区域と浸水の深さ
②土砂災害警戒区域に入っていないか
③津波の到達予想や避難方向
④指定緊急避難場所と避難所
⑤自宅から避難先までの安全な経路
指定緊急避難場所は「災害から命を守るために逃げる場所」、避難所は「被災後に一定期間生活する場所」です。
必ずしも同じ施設とは限りません。
地図を見るだけでなく、家族で実際に避難経路を歩いておくと、危険なブロック塀や狭い道路、夜間に見えにくい場所などにも気づけます。
2.家の中を安全な状態にする
災害時には、避難用品を取りに行く前に、家具の転倒やガラスの飛散でけがをする可能性があります。
特に寝室や子ども部屋では、背の高い家具が倒れてこない配置にすることが重要です。
具体的には、次のような対策が考えられます。
①家具をL字金具や突っ張り器具で固定する
②テレビや電子レンジの下に耐震マットを敷く
③食器棚に開閉防止器具を取り付ける
④窓やガラス扉に飛散防止フィルムを貼る
⑤玄関や廊下などの避難経路に物を置かない
⑥寝室に大型家具を置かない
消防庁も、家具の固定だけでなく、配置の工夫や住宅の耐震診断・耐震補強を事前対策として挙げています。
まずは、長い時間を過ごす寝室とリビングから見直しましょう。
3.水・食料・簡易トイレを備蓄する
大規模災害では、道路や物流が寸断され、支援物資がすぐに届かない可能性があります。
内閣府は、飲料水について「1人1日3リットル」を目安とし、食料とともに最低3日分、できれば1週間分を備えるよう案内しています。
4人家族が1週間分の飲料水を用意する場合は、
3リットル×4人×7日=84リットル
が一つの目安です。
すべてを長期保存食にする必要はありません。米、レトルト食品、缶詰、乾麺、シリアルなど、普段食べている食品を少し多めに購入し、古いものから消費して補充する「ローリングストック」が現実的です。
また、忘れやすいのが簡易トイレです。
断水すると、自宅の便器が壊れていなくても水を流せない場合があります。経済産業省は、災害用トイレについて、1人1週間当たり35回分を備蓄の目安としています。4人家族なら140回分です。内閣府の防災情報
4.非常持ち出し袋を「家族別」に作る
自宅に置いておく備蓄品と、避難時に持ち出す物は分けて考えましょう。非常持ち出し袋は重くしすぎず、すぐに背負って移動できる量に抑えます。
基本的な持ち出し品には、次のようなものがあります。
①飲料水とすぐ食べられる食品
②携帯電話、充電器、モバイルバッテリー
③懐中電灯、携帯ラジオ、予備電池
④救急用品、常備薬、お薬手帳の写し
⑤マスク、ウェットティッシュ、簡易トイレ
⑥雨具、防寒具、軍手、タオル
⑦現金、身分証明書などの写し
⑧ホイッスル、眼鏡、コンタクト用品
乳幼児がいる家庭ではミルクや紙おむつ、高齢者がいる家庭では持病の薬や介護用品、ペットがいる家庭ではフードやリードなどが必要です
。市販の防災セットを買って終わりにせず、家族構成に合わせて中身を入れ替えましょう。
5.家族との連絡方法と集合場所を決める
災害発生時には電話がつながりにくくなる可能性があります。
「連絡が取れなければ自宅に戻る」と決めていると、津波や火災の危険がある場所へ戻ってしまうことにもなりかねません。
あらかじめ、次のルールを決めておきましょう。
・最初に避難する場所
・家族が離れている場合の集合場所
・学校や勤務先から帰宅しない条件
・遠方に住む親族を共通の連絡先にする
・災害用伝言ダイヤル「171」やweb171の使い方
災害用伝言ダイヤル「171」は、毎月1日と15日などに体験利用できます。
家族で一度練習し、「誰の電話番号をキーにするか」まで決めておくと安心です。NTT東日本の利用案内
6.停電・断水・通信障害への対策をする
災害後も自宅が安全であれば、避難所へ行かずに「在宅避難」をする選択肢があります。
ただし、電気、ガス、水道、通信が止まった状態で生活できる準備が必要です。
カセットコンロ、ガスボンベ、LEDランタン、モバイルバッテリー、乾電池式ラジオなどを用意しておきましょう。
スマートフォンに頼りすぎず、家族の連絡先や避難先を紙にも書いておくことが大切です。
また、生活用水を確保するための給水袋、体を拭くシート、ポリ袋、ラップなども役立ちます。
カセットボンベや電池には使用期限があるため、年に1~2回は状態を確認しましょう。
7.現金と重要情報を分散して保管する
停電や通信障害が起きると、クレジットカード、スマートフォン決済、ATMが利用できなくなる可能性があります。
普段はキャッシュレス中心でも、千円札や硬貨を含む少額の現金を非常持ち出し袋などに分けて保管しておきましょう。
ただし、多額の現金を自宅に置くと盗難や紛失のリスクが高まります。
「当面の食料や交通費を支払える金額」にとどめ、保管場所を一つに集中させないことがポイントです。
併せて、次の情報を紙とデジタルの両方で管理しておくと、生活再建が進めやすくなります。
・本人確認書類や健康保険情報
・銀行・証券口座の金融機関名
・加入している保険会社と証券番号
・住宅ローンや借入先
・家族や勤務先の連絡先
・持病、服薬、かかりつけ医の情報
暗証番号やパスワードをそのまま紙に書くことは避け、第三者に悪用されない方法で管理しましょう。
8.保険と生活再建資金を点検する
防災用品だけでは、被災後の住宅修理費や当面の生活費までは賄えません。
FPの視点で特に重要なのが、保険と緊急予備資金の確認です。
火災保険に加入していても、地震・噴火・津波を原因とする火災や損壊は、原則として火災保険だけでは補償されません。
地震による損害に備えるには、地震保険をセットする必要があります。日本損害保険協会
一方、水災補償を外した契約では、豪雨による洪水や土砂災害が補償対象外になることがあります。
自宅のハザードマップと照らし合わせながら、建物だけでなく家財の補償も確認しましょう。
地震保険は、住宅を完全に再建するためというより、被災後の生活を安定させるための保険です。
保険だけに頼らず、修理費、仮住まい費用、交通費などに対応できる緊急予備資金も、通常の生活口座とは分けて確保しておくことが大切です。
防災は「一度そろえて終わり」ではない
防災対策は、高価な道具を一度に買いそろえることではありません。
自宅のリスクを知り、避難方法を決め、普段の食品を少し多めに持ち、保険や家計を定期的に確認することが基本です。
誕生月や防災の日などを「防災点検日」と決め、半年または1年ごとに、食品や薬の期限、家族の連絡先、避難経路、保険内容を見直しましょう。
災害そのものを防ぐことはできなくても、事前の準備によって被害と経済的な負担を小さくすることはできます。
防災とは、命を守る準備であると同時に、災害後の暮らしと家計を守るための備えなのです。
