「子どもが高校生になり、大学進学は目前。しかし、教育資金を準備できていない」と保護者は強い焦りを感じるものです。
大学の入学金や授業料だけでなく、下宿する場合には家賃や引っ越し費用なども必要になります。高校生になってから必要額を計算して「想像以上にお金がかかる」と気づく家庭も少なくありません。
大切なのは現在の資産や利用できる公的支援や奨学金を整理することです。
今回は預貯金200万円、学資保険150万円を保有する家庭を例に、大学資金をどのように準備すればよいのかを考えてみましょう。
預貯金200万円と学資保険150万円で初年度の学費は乗り切れるが?
この家庭には、次の資金があります。
預貯金:200万円
学資保険の満期金:150万円
合計:350万円
350万円あれば、大学の入学金や初年度授業料、受験料、パソコンや教材の購入費など進学時に必要となる費用を賄えます。
しかし、2年目からが問題です。また、病気、失業、住宅設備の故障、親の介護など予測できない支出が発生することがあり、預貯金の全額を大学費用に充ててしまうと急な出費に対応できません。
そのため、預貯金のうち一定額は「生活防衛資金」として残しておく必要があります。
大学は4年間あります。初年度の費用を準備できても2年目以降の資金計画がなければ途中で家計が行き詰まります。
そこで必要になるのが「家計の見直し」「奨学金」「資産運用」という3つの対策です。
学費の対策1 固定費を見直して余剰資金を生み出す
教育資金が不足しているときに最初に行うべきことは投資ではありません。まずは毎月の家計を見直し、継続的に教育費へ回せるお金を確保することです。
特に見直し効果が大きいのが次の固定費です。
【生命保険】の見直し
必要以上の死亡保障や医療保障に加入していないか確認します。
子どもの成長に伴い、必要な死亡保障額は徐々に減少していきます。また、複数の保険で保障内容が重複しているケースもあります。
新商品の発売によって同じような保障内容でも見直すことで掛け金を抑えられることもあります。
【携帯電話料金】の見直し
大手通信会社の料金プランから格安通信サービスへ変更することで家族全体の通信費を削減できます。
利用していない端末補償やオプションサービスがないかも確認しましょう。
【サブスクリプション】の解約
動画配信、音楽配信、オンライン学習、アプリ、ジム、クラウドサービスなどは1つひとつの金額が小さいため、契約していることを忘れやすい支出です。
クレジットカードや銀行口座の明細を数か月分確認し、利用していないサービスは解約しましょう。
こうした見直しによって月3万円を削減できれば、年間では36万円になります。
大学入学から卒業までの4年間で考えると合計144万円です。家計改善は投資のように価格変動の影響を受けず、確実に効果が積み上がる点が大きなメリットです。
学費の対策2 奨学金は余裕をもって利用する
家計を見直しても大学費用をすべて準備できない場合は奨学金の利用を検討します。
日本学生支援機構の奨学金には返済不要の給付奨学金と、卒業後に返済する貸与奨学金があります。貸与奨学金には無利子の第一種奨学金と、有利子の第二種奨学金があります。
高校生は在学している高校を通じて進学前の「予約採用」に申し込むことができます。進学後に申し込む在学採用もありますが、早めに高校の進路指導担当者へ相談しておくことが重要です。
第二種奨学金については大学の場合、月額2万円から12万円まで1万円単位で貸与月額を選択できます。
例えば、大学2年目以降の不足額が年間60万円であれば、月額5万円の奨学金で補うことができます。
奨学金は教育を受けるための有効な制度ですが、卒業後は子ども本人に返済義務が生じます。
「誰が返済するのか」「毎月いくら返済するのか」「親がどこまで支援するのか」など、申し込む前に親子で話し合っておきましょう。
学費の対策3 浮いた月2万円をNISAで積み立てる
家計の見直しで生まれた資金について、当面使う予定がない部分をNISAのつみたて投資枠で運用する方法もあります。
現在のNISAは制度が恒久化され、つみたて投資枠では年間120万円まで投資できます。
例えば月2万円を積み立てる場合、投資額は年間24万円です。4年間継続すれば元本は96万円になります。
そこで、大学2年目以降は奨学金を利用して授業料を補いながら、月2万円の積立投資を継続し、卒業時に運用資産が増えていれば、奨学金の一部を繰上返済するという考え方があります。
ただし、この方法には重要な注意点があります。
奨学金を借りて投資をする考え方にはリスクがある
NISAを利用しても元本が保証されるわけではありません。
大学在学中の4年間は株式投資の期間としては決して長くありません。卒業直前に株価が下落すれば、積立額を下回っている可能性もあります。
そのため「運用益で奨学金を返す」という計画を前提にしてはいけません。
運用が順調であれば繰上返済に充てる一方、値下がりしている場合は無理に売却せず、奨学金を通常どおり分割返済するという選択肢を残しておく必要があります。
また、奨学金の借入額を増やしてまで投資額を確保することも避けるべきです。
優先順位は、次のようになります。
①入学金や直近の授業料を現預金で確保する
②生活防衛資金を残す
③家計を見直して毎月の黒字を増やす
④給付奨学金や授業料減免の対象になるか確認する
⑤学費の不足分について貸与奨学金を利用する
⑥余裕資金の範囲でNISAを活用する
投資は教育資金不足を一気に解決する手段ではなく、家計改善と資金調達を補助する取り組みとして位置づけましょう。
給付奨学金や授業料減免も必ず確認する
奨学金を検討する際は貸与型だけでなく、返済不要の給付奨学金や授業料等減免制度の対象にならないか確認することが大切です。
日本学生支援機構では子どもを3人以上、扶養している世帯について授業料や入学金を免除、減免する制度があります。(就学支援新制度)
また、大学独自の奨学金、自治体の支援制度、民間団体の給付金などが利用できる場合もあります。
制度によって申込期限、所得基準、成績基準、居住地域などの条件が異なります。合格後に調べ始めるのではなく、高校2年生の段階で情報を集めておきましょう。
子ども本人にも現状を共有する
教育資金の問題を保護者だけで抱え込む必要はありません。
子ども本人にも家計の状況と大学進学に必要な費用を伝えましょう。
例えば、次のような点を一緒に検討します。
・国公立大学と私立大学の費用差
・自宅通学と一人暮らしの費用差
・貸与奨学金の借入額と卒業後の返済
・アルバイトと学業のバランス
・大学独自の特待生制度
子どもに必要以上の不安を与える必要はありませんが、「進学するには費用がかかる」ことを認識してもらうことで「なぜ進学するのか」、子どもが進路を主体的に考えるきっかけにもなります。
教育資金が不足していても、今からできることはある
預貯金200万円と学資保険150万円があれば大学初年度の費用は賄えます。
2年目以降の資金を準備できていない場合は家計の見直しによって余剰資金を生み出し、不足額について奨学金を利用する方法が考えられます。
生活防衛資金と直近の教育費を確保したうえで、余裕資金をNISAで積み立てることも選択肢の一つです。
卒業時に運用が順調であれば、資産の一部を奨学金の繰上返済に充てる。相場が下落していれば、無理に売却せず、当初の返済計画に従う。このように複数の選択肢を用意しておくことが大切です。
教育資金の準備が遅れたときに必要なのは一発逆転を狙う投資ではありません。
現在の資産を守り、固定費を削減し、利用できる支援制度を調べ、不足分だけを借りる。そして余裕のある範囲で資産形成を続けることです。
進学までの期間が短くても、家計全体を整理して優先順位を決めれば現実的な資金計画を立てることは可能です。
