「ファイナンシャルプランニングは、収入が増えてから学べばいい」
大学生の皆さんの中には、そう考える人もいるかもしれません。
しかし、お金について判断する機会は社会人になる前から訪れます。
・就職先を決める
・部屋を借りる
・奨学金を返す
・クレジットカードを使う
・保険や投資を勧められる
その1つひとつが将来の家計に影響します。
ファイナンシャルプランニングとは、
自分の収入と支出を把握し、将来の希望に合わせて、お金の使い方・備え方を考えることです。
学んだから必ずお金持ちになれるわけではありません。
それでも、「仕組みを知らないまま商品を契約して損をすること」や、
「準備不足でチャンスを逃がすこと」は減らせます。
社会人になる前に学ぶことで、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
① 給与の「額面」だけで就職先を選ぶ失敗を防げる
就職活動では、初任給の高さが魅力的に見えます。
しかし、毎月の生活を左右するのは、給与の額面だけではありません。
税金や社会保険料が差し引かれた後の手取り額、家賃、通勤費、住宅手当、福利厚生まで見て、初めて暮らしの姿が見えてきます。
例えば、月給が少し高くても、勤務地の近くで一人暮らしをする必要があり、家賃の負担が大きければ、自由に使えるお金は思ったほど残らないかもしれません。
反対に、給与額だけでは目立たなくても、住宅補助などによって生活費を抑えられる場合もあります。
給与明細の読み方と生活費の見積もり方を知っていれば、「月給が高いから得だ」と早合点せず、自分に合った就職先を選べます。
もちろん、仕事のやりがいや成長の機会も重要です。
お金の条件を正しく理解することは、それらを含めて納得できる選択をするための助けになります。
② 家賃や固定費で「気づかない損」を防げる
社会人になって初めて部屋を借りるとき、「少し高いけれど、きれいな部屋だから」と決めてしまうこともあります。ただ、家賃が月1万円違えば、単純計算で年間12万円、5年間では60万円の差になります。
契約した住居費は、外食を減らすように気軽には調整できません。
通信費やサブスクリプションなども、毎月の支払いが重なると家計を圧迫します。
引っ越し前に手取り収入と生活費を書き出しておけば、「住み始めてからお金が足りない」という失敗を防ぎやすくなります。
また、節約は何でも我慢することではありません。
自分にとって価値の高いことにお金を使うため、優先順位の低い支出を見直すことです。
趣味や旅行、友人との時間を楽しみたいなら、なおさら毎月の固定費を把握しておく意味があります。
③ 奨学金やクレジットで、将来の自分を苦しめずに済む
貸与型奨学金を利用している人は、卒業後の返還額を生活費に組み込んで考える必要があります。
「毎月いくら返すのか」を知らずに家賃や車のローンを決めると、就職後に自由に使えるお金が想像以上に少なくなることがあります。
クレジットカードや分割払いも、使ったときには現金が減らないため、支出を実感しにくいものです。
しかし、その支払いには将来の給与を充てることになります。
契約前に支払総額や手数料を確認し、翌月以降の家計に無理がないか考える。
これだけでも、安易な使い過ぎを防げます。
もし奨学金の返還が難しくなった場合も、放置してはいけません。
日本学生支援機構には、条件に応じて月々の返還額を減らす制度や、返還期限を先送りする制度があります。
制度を知っていれば、困ったときに早めに相談することができます。
④ 保険の入り過ぎや、必要な備えの不足を避けられる
社会人になると医療保険や生命保険を勧められる機会があるかもしれません。
「病気になったら大変だから」と、勧められるまま加入すれば、毎月の保険料が家計の負担になります。
一方で、自分に必要な保障をまったく考えないのも不安です。
大切なのは、まず公的医療保険や勤務先の制度、手元の貯蓄を確認することです。
そのうえで、万一のときに自分では負担しきれない部分があるかを考えます。
独身で扶養する家族がいない人と、家族の生活費を支えている人とでは必要な保障も異なります。
社会保障と民間保険の役割を学べば
「何となく不安だから入る」
「若いから何も考えない」
といった判断を避けられます。
必要なところにお金を使い、不要な支払いを抑えることもファイナンシャルプランニングを学ぶメリットです。
⑤ 税制優遇の制度を使いながら、無理な投資を避けられる
「NISAを始めたほうが得らしい」と聞いたことがある人もいるでしょう。
NISAは、対象となる金融商品から得た利益が非課税になる制度です。
ただし、非課税だからといって投資したお金が必ず増えるわけではありません。
社会人になったばかりの時期には、引っ越しや家電の購入など、まとまった出費が生じることもあります。
近いうちに使うお金まで投資に回すと、必要なときに価格が下がっていて損失を出して売らざるを得ないかもしれません。
先に生活費と急な出費への備えを考え、長期間使う予定のないお金で資産形成を検討する。この順序を知っていれば制度のメリットを理解しつつ、自分の家計に合った使い方ができます。
⑥ 「簡単にもうかる話」で詐欺に遭うのを回避
社会人になると、収入があることを前提に投資商品や副業、マネースクールなどを勧められることがあります。友人やSNSで知り合った相手からの紹介で断りにくい場合もあるでしょう。
「借金してもすぐに取り戻せる」「今、契約しないと損をする」と急がされたら、一度立ち止まるべきです。
消費者庁も若者が借金やクレジット契約をして高額な契約を結ばされる事例を紹介しています。
ファイナンシャルプランニングを学ぶと利益だけでなく、費用、リスク、契約内容を確認する習慣が身に付きます。
仕組みを理解できないものには、その場で申し込まない。
困ったときは一人で抱え込まず、消費者ホットラインなどに相談する。
この判断力は、お金を増やす知識と同じくらい重要です。
最大のメリットは、将来の選択肢を増やせること
ここまで挙げた「得すること」や「防げる失敗」は、単なる節約の話ではありません。
毎月の支出を把握し、返済や将来の出費に備えていれば転職や学び直しを考えたときにも判断するための時間と余裕を持ちやすくなります。
反対に、収入があっても支払いに追われていれば「今の仕事を辞めたいけれど、生活費が心配で動けない」という状況になりかねません。
お金を管理する力は自分の進路を選ぶ力にもつながります。
私が大学生の皆さんに勧めたい最初の一歩は「卒業後の暮らし」を一度、数字にしてみることです。
就職後の手取りを見積もり、家賃、食費、奨学金の返還額などを書き出す。
そして、残ったお金を「今を楽しむため」「急な出費に備えるため」「将来の夢や希望のため」にどう配分するか考えてみてください。
社会人になる前から完璧な計画を立てる必要はありません。
自分で調べ、比べ、見直す方法を知っておくだけで、これから出会うお金の選択は変わります。
ファイナンシャルプランニングを学ぶ意義は、
知らずに損をしないこと、避けられる失敗を防ぐこと、そして自分が望む人生を選べる可能性を広げることにあるのです。
