(事例)
年収600万円の夫、妻は年収500万円の40代夫婦。子ども2人(高校生と中学生)。
なかなか貯蓄ができないが投資をしたいと希望。
資産は預金100万円のみ。
自動車1台保有。
持ち家で住宅ローン4000万円。
貯蓄ができないのが課題。
世帯年収は1,100万円ですが、実際に使える金額は税金や社会保険料を差し引いた後の手取りです。
夫婦の年間手取りを合計すると、おおむね860万円程度、月平均では約72万円と想定します。
ただし、毎月の給与だけでは約58万円、残りは賞与として受け取るケースが一般的です。ここでは、賞与を含めた年間収支を把握するため、月平均手取りを72万円として家計簿を作成します。
月々の家計簿例(改善前の現状)
| 支出項目 | 月額 | 内容 |
| 住宅費 | 140,000円 | 住宅ローン、管理費、修繕積立金など |
| 食費 | 100,000円 | 4人家族の食材、外食、昼食代 |
| 水道光熱費 | 30,000円 | 電気、ガス、水道 |
| 通信費 | 25,000円 | 家族のスマートフォン、インターネット |
| 日用品費 | 18,000円 | 洗剤、紙製品、生活用品 |
| 教育費 | 135,000円 | 学校費、塾、教材、部活動など |
| 自動車費 | 55,000円 | ガソリン、保険、車検、税金、駐車場 |
| 生命保険料 | 40,000円 | 医療保険、死亡保険、学資保険など |
| 夫婦の小遣い | 70,000円 | 夫4万円、妻3万円 |
| 被服・美容費 | 30,000円 | 家族の衣服、美容院、化粧品 |
| 医療費 | 12,000円 | 通院、歯科、薬代 |
| 交際・レジャー費 | 35,000円 | 外食、家族レジャー、友人との交流 |
| 子どもの小遣い等 | 15,000円 | 小遣い、友人との外出 |
| 特別支出の積立 | 35,000円 | 固定資産税、家電、帰省、冠婚葬祭 |
| 雑費 | 10,000円 | 予算外の小さな支出 |
| 支出合計 | 750,000円 | |
| 月平均手取り | 720,000円 | |
| 収支 | ▲30,000円 | 預貯金や児童手当などで補填 |
この家計では月平均で約3万円の赤字です。
実際には固定資産税、車検、旅行、家電の買い替えなどを「毎月の支出」と認識していない家庭も少なくありません。その場合、通常月は黒字に見えても、賞与月や年度末にまとまった支出が発生し、結局は年間を通して貯蓄ができな状態になります。
1.住宅費:月14万円
年収1,100万円の世帯では、住宅ローン返済が月15万円程度になっていることがあります。
例えば、住宅ローンが月12万円でも、マンションの場合には管理費や修繕積立金が月2万~3万円かかります。戸建ての場合も、将来の外壁塗装、給湯器、屋根などの修繕費を準備しなければなりません。
月々のローン返済額だけを住宅費と考えるのではなく、将来の費用も含めて判断する必要があります。
「固定資産税」「火災・地震保険」「マンションの管理費、修繕積立金」「戸建ての将来修繕費」「駐車場代」などを漏れなく計算しましょう。
2.食費:月10万円
中学生と高校生がいる世帯では、食費が高くなりやすい時期です。
食材費だけでなく、次のような支出も増えます。
「夫婦の勤務日の昼食代」「中学、高校生の昼食代」「子どもの部活動中の飲食」「コンビニでの買い物」「週末の外食」「飲料、菓子、酒類」など
例えば、食材費が月7万円、外食費が月2万円、昼食やコンビニ代が月1万円で合計10万円となります。
家計簿上は「食費7万円」と認識していても、外食やコンビニ代が夫婦の小遣いや雑費に入っており、実際には10万円を超えているケースもあります。
3.教育費:月13万5,000円
この世帯で家計を圧迫しているのが教育費です。
高校生の教育費
| 内容 | 月額目安 |
| 授業料・学校納付金 | 10,000円 |
| 通学費 | 5,000円 |
| 塾・予備校 | 40,000円 |
| 教材・模試 | 8,000円 |
| 部活動・昼食など | 12,000円 |
| 合計 | 75,000円 |
授業料の支援制度を利用できたとしても、修学旅行、教材、制服、タブレット、模試、部活動費などは別途必要です。
中学生の教育費
| 内容 | 月額目安 |
| 学校関連費 | 8,000円 |
| 塾代 | 35,000円 |
| 教材・模試 | 7,000円 |
| 部活動・小遣いなど | 10,000円 |
| 合計 | 60,000円 |
2人合わせると月13万5,000円です。
夏期講習や冬期講習、受験料、入学金などが発生する年には教育費が年間200万円を超えることもあります。
4.自動車費:月5万5,000円
自動車費は、ガソリン代だけで考えてはいけません。
| 内容 | 月額換算 |
| ガソリン代 | 15,000円 |
| 任意保険 | 7,000円 |
| 駐車場代 | 10,000円 |
| 自動車税 | 3,000円 |
| 車検・整備費 | 8,000円 |
| タイヤ・消耗品 | 4,000円 |
| 将来の買い替え積立 | 8,000円 |
| 合計 | 55,000円 |
ローンが残っている場合は、さらに月2万~4万円程度が加わります。
車検や自動車税を賞与から支払っている家庭では、毎月の家計簿に自動車費が十分に反映されず、実際よりも生活費を少なく見積もりがちです。
5.保険料:月4万円
夫婦共働きで年収も比較的高い場合、生命保険や医療保険に複数加入していることがあります。
例えば、次のような内訳です。
・夫の死亡保険:月1万2,000円
・妻の死亡保険:月8,000円
・夫婦の医療・がん保険:月1万円
・学資保険や貯蓄型保険:月1万円
合計すると月4万円です。
保険料の一部が将来戻ってくる商品であっても、現在の家計から現金が出ていくことに変わりはありません。預貯金が100万円しかない状況では、貯蓄型保険よりも手元資金の確保を優先した方がよい場合もあります。
6.夫婦の小遣い:月7万円
この世帯では夫4万円、妻3万円で合計7万円です。
小遣いに含まれる範囲を明確にしていないと実際の支出が膨らみます。
例えば、夫の小遣い4万円とは別に、昼食代、飲み会代、ゴルフ代、衣服代が家計から支払われていると実質的な個人支出は月6万~7万円になることがあります。
妻についても昼食、化粧品、美容院、友人とのランチなどが別の項目に計上されれば、家計全体の支出は大きくなります。
貯蓄できない主な原因
この家庭が貯蓄できない最大の原因は浪費というよりも、複数の高額支出が重なっていることです。
特に影響が大きいのは、次の4項目です。
①教育費が上昇
高校生と中学生がいるため、現在から数年間は教育費が最も高くなる時期です。さらに、大学進学後は1人当たり年間100万~200万円程度の負担が発生する可能性があります。
②賞与を生活費として使っている
固定資産税、自動車税、車検、旅行、家電、受験費用などを賞与から支払うと賞与が残りません。
そのため「年間の貯蓄が増えない」という状態になります。
③年収に合わせて固定費が高くなっている
住宅、保険、通信、自動車などの固定費が積み重なっています。
固定費だけでも、次の金額になります。
- 住宅費:14万円
- 通信費:2万5,000円
- 自動車費:5万5,000円
- 保険料:4万円
合計は月26万円です。ここに教育費14万5,000円を加えると、毎月40万円以上が簡単には削減できない支出として固定されています。
④特別支出を月々の支出に含めていない
次のような支出は毎月発生しませんが、年間では大きな金額になります。
| 特別支出 | 年間額の例 |
| 固定資産税 | 150,000円 |
| 自動車税・車検・整備 | 180,000円 |
| 家族旅行・帰省 | 200,000円 |
| 家電・家具 | 100,000円 |
| 冠婚葬祭 | 80,000円 |
| 学校行事・講習・受験費用 | 250,000円 |
| その他 | 100,000円 |
| 合計 | 1,060,000円 |
年間100万円前後の臨時支出があれば、賞与の大部分がなくなります。
投資を始める前の注意点
この世帯は年収だけを見れば投資できる家計に見えます。
しかし、金融資産が預貯金100万円しかないため、現時点でまとまった金額を投資するのは慎重に考える必要があります。
月の生活費が約70万円であるのに対して預貯金100万円は生活費の約1.5か月分しかありません。
子どもの受験、大学入学、自動車の故障、住宅設備の修理などが重なれば、すぐに資金不足となります。
まずは最低でも生活費3か月分となる200万~250万円、できれば教育費を考慮して300万~400万円程度の現金を確保したいところです。
家計改善後の目標
投資を始めるためには、例えば毎月7万円程度の支出削減を目標にします。
| 改善項目 | 現状 | 改善後 | 削減額 |
| 食費 | 100,000円 | 85,000円 | 15,000円 |
| 通信費 | 25,000円 | 16,000円 | 9,000円 |
| 保険料 | 40,000円 | 25,000円 | 15,000円 |
| 小遣い | 70,000円 | 60,000円 | 10,000円 |
| 被服・美容費 | 30,000円 | 23,000円 | 7,000円 |
| 交際・レジャー費 | 35,000円 | 25,000円 | 10,000円 |
| 雑費 | 10,000円 | 7,000円 | 3,000円 |
| 合計削減額 | 69,000円 |
月6万9,000円を改善できれば、月3万円の赤字を解消し、約4万円を貯蓄に回せます。
賞与から年間50万円を貯蓄し、毎月4万円を貯蓄できれば年間98万円の現金を増やせます。現在の100万円と合わせると、約2年半で350万円程度の預貯金を確保できます。
当面の資金配分例
家計改善後に毎月4万円を確保できるようになった場合は、すべてを投資に回すのではなく、次のように分けます。
| 資金の目的 | 月額 |
| 生活防衛資金の積立 | 15,000円 |
| 教育費の積立 | 15,000円 |
| NISAでの積立投資 | 10,000円 |
| 合計 | 40,000円 |
投資は月10,000円からでも始められます。重要なのは投資額の大きさではなく、生活防衛資金を減らさずに継続できることです。
預貯金が300万円程度まで増え、大学進学費用の見通しが立った段階で、NISAの積立額を月2万~3万円へ増額する方法が現実的です。
この家庭は「収入が少ないから貯蓄できない」のではなく、教育費が高い時期に、住宅・自動車・保険などの固定費も大きく、賞与が特別支出で消えている家計です。投資を優先するより、まずは年間収支を黒字化し、預貯金を厚くすることが必要です。
