自宅を「買うこと」がゴールではない
「念願のマイホームを買ったのに思っていた暮らしと違う」
住宅購入後、そう感じる人は少なくありません。
国土交通省の調査でも住宅購入者の約4人に1人が何らかの後悔をしていることがわかっています。
原因は資金計画・立地・将来設計など「事前の準備不足」です。
家は一生に一度の大きな買い物。だからこそ、「勢い」ではなく「計画」で動くことが重要です。
本コラムでは、ファイナンシャルプランナーが見てきた「失敗した人」の共通点と
購入前に必ず確認したい10のチェックリストを紹介します。
1. 共通点① 予算の上限を「銀行の審査額」で決めてしまう
多くの人がやりがちな失敗が「銀行が貸してくれる金額=買っていい金額」と考えること。
しかし、これは大きな誤解です。
住宅ローン審査は「返済可能額」を基準にしており生活のゆとりまでは考慮していません。
年収に対する返済比率(返済負担率)は実生活では30%以内が理想です。
「借りられる金額」ではなく「無理なく返せる金額」で家を選びましょう。
2. 共通点② 頭金ゼロで購入してローン地獄に陥る
頭金を入れずにフルローンで購入すると借入額が膨らみ、総支払額が数百万円単位で増えます。
さらに転勤・病気・教育費などの不測の事態が起こると家計が破綻しやすくなります。
理想は物件価格の15%程度の頭金+6か月分の生活防衛資金を確保した状態です。
貯金がない状態での購入は「将来の自由」を奪うリスクを伴います。
3. 共通点③ 立地より「建物のデザイン」を優先してしまう
「新築」「デザイン性」「設備の豪華さ」ばかりを重視して立地条件を軽視するのも典型的な失敗です。
立地は資産価値を決める最大の要素です。
駅・学校・スーパー・病院などの利便性、治安、災害リスク、将来の地価動向まで確認しましょう。
「家はリフォームできるが、立地は変えられない」
この原則を忘れずに選ぶことが失敗を防ぐ最大のポイントです。
4. 共通点④ 生活動線をイメージせず間取りを決める
住宅見学の際に「広いリビング」や「おしゃれなキッチン」に目を奪われていませんか?
しかし、実際に住んでみると「洗濯動線が悪い」「収納が足りない」「掃除がしづらい」と後悔するケースが多数。
購入前に、
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洗濯 → 干す → しまう の動線
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玄関 → リビング → トイレの距離
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収納の容量と位置
を実際に「生活の流れ」としてシミュレーションしましょう。
間取りは見た目ではなく、生活の快適さで判断するのが鉄則です。
5. 共通点⑤ 教育・老後など将来のライフプランを考えていない
子どもの進学・車の買い替え・親の介護・老後資金など
これらを想定せずにローンを組むと後々の支出に対応できなくなります。
住宅購入前に家計のキャッシュフロー表を作成し、
「今後30年の支出シナリオ」を可視化しておくことが重要です。
特に、教育費と住宅費のピークが重なる「子どもが大学進学する時期」を想定した計画を立てておきましょう。
6. 共通点⑥ 住宅ローンの金利タイプを理解していない
「金利が低いから変動型でいい」と安易に選ぶと危険です。
金利が上昇すれば返済額が数万円単位で増える可能性もあります。
固定金利・変動金利・ミックスローンの違いを理解し、
「金利が上がっても家計が耐えられるか」をシミュレーションすることが必須です。
また、住宅ローン控除や団信(団体信用生命保険)など、
税制・保障制度も合わせて比較しましょう。
7. 共通点⑦ 修繕・税金など「見えないコスト」を計算していない
家を買うと購入後にも以下のような費用が発生します。
| 項目 | 年間目安 |
|---|---|
| 固定資産税 | 10〜20万円前後 |
| 火災・地震保険 | 3〜5万円 |
| 修繕費(戸建) | 年10万円程度の積立推奨 |
| 管理費・修繕積立金(マンション) | 月1〜3万円 |
これらを含めた「総支出」を把握していないと購入後に家計が圧迫されます。
ローン返済以外のコストも想定しておきましょう。
8. 共通点⑧ 売却・住み替えを想定していない
最初から「一生この家に住む」と決めてしまうのは危険です。
転勤・家族構成の変化・老後の生活設計によって住み替えが必要になるケースは多いです。
購入時点で
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売却しやすい立地か
-
賃貸需要のあるエリアか
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将来リフォーム・リノベーションが可能か
を確認しておくと、将来的に柔軟な選択ができます。
9. 共通点⑨ 周辺環境・近隣トラブルを調べていない
実際に住んでみてから「夜が騒がしい」「隣人トラブルが多い」「臭気・騒音がひどい」と気づく人も少なくありません。
昼だけでなく夜や週末の様子を確認することが重要です。
また、近隣に工場・繁華街・幹線道路がある場合、将来的な環境変化(騒音・交通量)も考慮しておきましょう。
10. 共通点⑩ 「勢い」と「感情」で決めてしまう
最も多い失敗原因が「内覧して一目惚れした」「他の人に取られそうで焦った」という心理的要因です。
住宅購入は感情よりも計画が大切です。
少なくとも5件以上の物件を比較して
「立地」「価格」「将来の維持費」「資産性」を冷静に分析して決断しましょう。
後悔しないためのチェックリスト10項目
| No | チェック項目 | 自己評価(Yes/No) |
|---|---|---|
| 1 | 無理のない返済計画を立てている | ☐ / ☐ |
| 2 | 頭金+生活防衛資金を確保している | ☐ / ☐ |
| 3 | 立地と資産価値を重視して選んでいる | ☐ / ☐ |
| 4 | 家事・生活動線をシミュレーションした | ☐ / ☐ |
| 5 | 将来の教育費・老後資金を見据えている | ☐ / ☐ |
| 6 | 金利タイプの特徴を理解している | ☐ / ☐ |
| 7 | 固定費・修繕費を含めた総支出を把握している | ☐ / ☐ |
| 8 | 売却・賃貸などの出口戦略を考えている | ☐ / ☐ |
| 9 | 周辺環境・治安を確認した | ☐ / ☐ |
| 10 | 感情ではなくデータと計画で決めた | ☐ / ☐ |
7項目以上がYesなら、購入タイミングとして適正。
5項目以下なら、まず家計やライフプランを再点検するのがおすすめです。
【まとめ】「家を買う」ことは「未来の生活を設計すること」
マイホーム購入で後悔する人の多くは「買うこと」だけを目的にしてしまっています。
しかし本来、家を買うとは「これからの人生をどう生きるか」をデザインする行為です。
家そのものよりも、
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そこに住む家族の生活
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将来の変化に対応できる柔軟性
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家計の安定
この3つをバランスよく考えた人であれば「失敗しない」住宅を購入できる人です。
焦らずに比べて、計画して
「買ってよかった」と心から言える家を選びましょう。
