近年、株式投資の中でも「IPO(新規上場株)」が個人投資家の注目を集めています。
上場当初に株価が高騰すれば、短期間で数十%の利益を狙える魅力があります。
しかし、実はその「IPO」を超える可能性を秘めた投資手法が存在します。それが「エンジェル投資」です。
このコラムでは、エンジェル投資の仕組みやIPOとの違い、そしてどのようなリターンが期待できるのかを投資経験のあるFPの視点から詳しく解説します。
1. IPO投資の現実 「抽選に当たらない」「上場後は下落」
IPO投資は未上場企業が新たに株式市場に上場する際に新規発行株を購入する手法です。
当選すれば初値上昇によって利益を得られる可能性がありますが、近年は人気が高まりすぎており個人投資家が抽選に当たる確率は極めて低いのが実情です。
さらに上場直後の株価が急落するケースも増えています。
つまりIPO投資は「夢があるが、誰もが勝てるわけではない」投資になっているのです。
2. エンジェル投資とは ? IPOの「前段階」に投資する手法
エンジェル投資とは上場していないスタートアップ企業に対して個人投資家が資金を提供し、株式を取得する投資手法です。
つまりIPOのずっと前の段階で投資するということです。
投資した企業が将来的にIPOやM&Aによって大きく成長した場合、保有株式の価値は数倍、何十倍に膨らむ可能性があります。
IPO投資が「上場当日からの短期勝負」だとすれば、エンジェル投資は「数年後の大化けを狙う中期戦」といえます。
3. リターンのインパクト「IPOを超える10倍の可能性」
エンジェル投資の魅力は圧倒的なリターンの可能性です。
例えばシリコンバレーでは創業初期にAirbnbやUberに出資した個人投資家が数百倍のリターンを得た例が数多くあります。
国内でもメルカリやスマートニュース、freeeといった企業の初期投資家は投資額の数十倍の利益を得たとされています。
仮に100万円を投資して10倍になれば1000万円です。
IPO投資では到底狙えないスケールのリターンです。
もちろん成功確率は低いですが、リスクを取るからこそリターンも大きいのがエンジェル投資の特徴です。
4. IPO投資との違い「リスクとリターンの構造」比較
| 項目 | IPO投資 | エンジェル投資 |
|---|---|---|
| 投資タイミング | 上場直前 | 創業初期(シード・アーリー)レイタ-期 |
| 投資金額 | 数十万円〜 | 数十万円〜数千万円 |
| 当選確率 | 低い(抽選) | 高い(希望すれば出資可能) |
| リターン | 数十%〜数倍 | 数倍〜数十倍 |
| リスク | 中程度(上場後下落) | 高い(倒産リスクあり) |
| 流動性 | 高い(売買可能) | 低い(売却できるまで数年) |
| 参加方法 | 証券会社経由 | 証券会社、クラウドファンディングなど |
IPO投資は短期的・限定的な利益を狙う「安定型」。
一方、エンジェル投資はリスクを負いながらも「大化け」を狙うハイリスクの投資です。
5. エンジェル税制 「投資家を守る優遇制度」
エンジェル投資の最大の後押しとなっているのが国の支援制度「エンジェル税制」です。
これは創業間もない企業に出資した投資家に対して、所得税の軽減や株式譲渡益の非課税などの優遇を行う制度です。
具体的には以下の2タイプがあります。
-
Aタイプ(所得控除)
投資額の一部が所得控除対象となり、税負担を軽減。 -
Bタイプ(譲渡益控除)
他の株式譲渡益と相殺できる。
これにより、失敗時の損失リスクを一定程度抑えることが可能です。
節税と資産形成を両立できる点で富裕層や高所得者層を中心に注目が高まっています。
6. エンジェル投資を始める3つの方法
① 株式投資型クラウドファンディング
国内では少額から未上場企業に出資できるプラットフォームが登場しています。
10万円〜50万円程度から投資可能で初心者でも参加しやすいのが特徴です。
② スタートアップとの直接出資
経営者と直接コンタクトを取り、資金提供と引き換えに株式を取得する方法です。
経営支援や顧問として関わるケースもあり「スマートマネー(知識+資金)」として企業価値向上に貢献できます。
③ ベンチャーキャピタルとの共同投資
VC(ベンチャーキャピタル)が主導するラウンドに個人として参加するパターンも増えています。
リスクは高いものの、専門家の審査を経た案件に投資できる点で安心感があります。
弊社では証券会社と提携し、エンジェル投資に関する情報提供を行っています。
興味のある方は気軽にご連絡ください。
7. 成功する投資家が意識しているポイント
① 経営者の「人間力」を見る
事業内容以上に、経営者の情熱・覚悟・柔軟性が成功の鍵になります。
「この人なら困難を乗り越えられる」と感じる経営者に投資することが重要です。
② 分散投資が鉄則
「10社に投資して1社が成功すれば大成功」これがエンジェル投資の世界です。
リスクを分散することで失敗を前提にしながらもトータルでのリターンを狙う戦略が有効です。
③ EXIT(出口戦略)を意識する
投資する際には「どのようにリターンを得るのか」を明確にする必要があります。
IPOを目指す企業か、M&Aによる売却を想定しているのか。
出口の見通しがあるかどうかでリスクは大きく異なります。
8. 今後の展望 「個人が未来を創る投資家になる時代へ」
政府は「スタートアップ創出計画」を掲げており、創業件数を倍増させる方針を打ち出しています。
これにより未上場段階の投資機会は確実に拡大していくでしょう。
さらに生成AI・バイオテック・クリーンエネルギーなど次世代産業への資金需要は増加しています。
こうしたトレンド企業に初期段階で関わることができるのがエンジェル投資の醍醐味です。
いわば「IPOを待つ投資」ではなく「IPOを生み出す投資」と言えます。
9. エンジェル投資は「リスクの裏にチャンスがある」
IPO投資はすでに「人気が集中した市場」となっています。
一方、エンジェル投資は「まだ誰も知らない原石に投資する市場」です。
確かにリスクは大きいものの制度面・情報面の整備が進み、今では一般の個人投資家でも挑戦が可能になりました。
少額からでも始められる時代だからこそ、未来を見据えた一歩を踏み出す価値があります。
エンジェル投資は単なる「株の先買い」ではなく、『未来を創る資産形成』の第一歩です。
IPOで勝ち残るよりも「IPOを起こす側に回る」
それが次世代の投資家像といえるでしょう。


