誰もが感じている「住宅価格、高すぎない?」という違和感
近年、住宅購入を検討している人の多くがこう感じているのではないでしょうか。
「ここまで上がっていると、そろそろ下がるのでは?」
しかし、2025年現在も住宅価格は高止まりが続いており、
「いつか下がるだろう」と待っていた人が買い時を逃すケースも少なくありません。
では、なぜこれほど長期間にわたって住宅価格が下がらずに上がり続けているのでしょうか?
このコラムではファイナンシャルプランナーの視点から、住宅価格が下がらない理由と、
これからの住宅価格の動向について考えてみたいと思います。
1. 住宅価格が上がり続けている「5つの要因」
① 建築資材・人件費の高騰
住宅価格の上昇を牽引している最大要因が建築コストの上昇です。
コロナ禍以降、ウッドショック(木材価格の急騰)や鉄・コンクリート・断熱材などの資材費の上昇が続いています。
さらに建設業界では職人不足が深刻化しており、人件費の上昇も価格を押し上げています。
つまり、仮に土地価格が下がっても「建てるコスト」が下がらない限り総額は下がらないのです。
② 円安と輸入コストの上昇
日本の住宅建材の多くは輸入品に依存しています。
円安が進むと海外からの輸入コストが上昇して住宅価格にも転嫁されます。
特に2024年から円相場が1ドル=150円ほどで推移しており、
建材・設備機器の値上げが相次ぎました。
そのため為替が落ち着かない限り「住宅価格が下がる」というシナリオは描きにくい状況です。
③ 都市部の地価上昇と土地の希少化
東京都心部・大阪・福岡など主要都市では再開発が進み、地価の上昇傾向が続いています。
特に駅近や人気の学区など「需要の集中エリア」では土地の取り合いが激化して
供給より需要が上回る状態が常態化しています。
たとえ金利が上がっても買い手が多いエリアは値下がりしにくく、
「立地プレミアム」が価格を支えているのです。
④ 超低金利の長期化と「買える人が増えた」
日本では長らく超低金利政策が続いており、住宅ローン金利も1%前後で推移しています。
たとえば金利が1%と1.5%では同じ返済額で借りられる金額に数百万円の差が出ます。
結果として「以前より高い家が買える」層が増えたため、需要が落ちにくい構造になっています。
「金利が低い」ことが価格が下がりにくい下地なのです。
⑤ 投資マネーの流入と「資産としての住宅」志向
近年、住宅を「住む場所」ではなく「資産」として購入する人が増えています。
都心マンションは富裕層・法人・海外投資家の購入が目立ち、地方でもリゾート物件・二拠点生活用住宅などの投資目的購入が拡大しています。
この「投資マネーの流入」が住宅市場を底支えしている構図です。
2. 「住宅価格が下がらない」とは言っても、すべての地域がそうではない
価格が下がらないのは主に「都市部・駅近・人気のエリア」です。
一方で、以下のようなエリアでは値上がりするどころか安値のまま推移しています。
-
郊外のニュータウン(人口減少・高齢化が進行)
-
駅から遠い住宅地
-
過疎地や再建築不可物件
つまり、住宅市場はすでに「二極化」しています。
「どこでも値下がりしない」わけではなく、選ばれる物件だけが値持ちする時代に突入したのです。
3. 「今は買うべきか?」を判断する3つの視点
① 【金利】これ以上の「下げ余地」はほぼない
日本の住宅ローン金利は、歴史的な低水準にあります。
今後は日銀の金融政策修正によって金利上昇リスクの方が高いと見られています。
つまり、「金利が上がる前に借りる」ことは長期的に見れば合理的な判断です。
② 【価格】待っても下がらない構造的な理由
先述の通り住宅価格は建築コストと地価で決まります。
この2つが同時に下がる可能性は低く、「価格下落を待って買う」という考えは機会損失のリスクが高くなります。
むしろインフレ環境下では「将来の建築費上昇」でますます買えなくなるリスクが高まります。
③ 【ライフプラン】今の暮らしを軸に考える
家は投資でありながら「生活の基盤」でもあります。
「値上がるかどうか」よりも自分と家族がどんな暮らしをしたいかで判断すべきです。
「転勤の可能性」「子どもの進学」「老後の生活費」など、
ライフイベントを踏まえたうえで住宅が人生設計にどう寄与するかを考えることが重要です。
4. 「買い時」を見極めるための実践的チェックリスト
| チェック項目 | Yes | No |
|---|---|---|
| 現在の家賃とローン返済額が大きく変わらない | ☐ | ☐ |
| 安定した収入と将来設計がある | ☐ | ☐ |
| 貯蓄・予備資金(6か月分以上)を確保している | ☐ | ☐ |
| 金利上昇しても返済に耐えられる | ☐ | ☐ |
| 資産価値の落ちにくいエリアを選んでいる | ☐ | ☐ |
5項目中4つ以上が「Yes」であれば、今が「買い時」といえます。
逆に「No」が多い場合は購入のタイミングよりも家計の安定化を優先するのが賢明かもしれません。
下がるのを待つより、「価値の下がらない家」を選ぶ
住宅価格が下がらないのは偶然ではなく構造的な必然です。
資材・人件費・地価・円安・需要など。
これらが複合的に絡み合い、簡単には価格が崩れない状態になっています。
これからの住宅購入で重要なのは「いつ買うか」ではなく「何を買うか」です。
資産価値の下がりにくいエリア・建物・間取りを選び、
長期的なライフプランに合った資金計画を立てることが
「買って後悔しない住宅購入」の方法です。
今が「買い時」かどうか?
それは市場ではなく「あなたの人生設計」によって決まります。
判断に迷われる際には専門家の意見も参考してみてください。

