相続手続きをはじめる前に必ず確認すべきこと「遺産はいくら?①預貯金の残高確認」

相続手続きをはじめる前に必ず確認すべきこと「遺産はいくら?①預貯金の残高確認」

みなさん、こんにちは。

相続手続きカウンセラーの山原です。

 

本日は相続手続きをはじめる前に必ず確認すべきことの3つめ「遺産はいくら?①預貯金の残高確認」についてお伝えします。

 

相続手続きの前に確認すべきこととして

①相続人はだれなのか (【コラム】相続人は誰だ )

②遺言書の有無 (【コラム】遺言書①  ③ 

についてお伝えしてきました。

 

そして、3つめは「遺産はいくらあるのか」ということです。

以前のコラムで「法定相続情報証明制度」を利用するかどうかも遺産の洗い出しを先にした方が判断しやすいというお話をしました。

どのような財産があって、その価値はいくらなのか、相続財産の全体像を把握しなければ、もっと重要な相続手続きで間違った選択をしてしまう危険もあります。

 

■遺産はいくらあるのか①預貯金などの残高確認

遺産として必ずあると言っても過言ではないのが「銀行口座」です。

残高が知りたいだけなら通帳記入で足りますが、遺産分割で金額の証明が必要な場合や、相続税の申告をする場合は「残高証明書」が必要です。

「残高証明書」は、特定の日における預貯金口座の残高を記載した書類なので、過去の入出金の履歴を知ることはできません。お金の流れを確認したいときは別途手続きが必要です。

 

■準備しておきたいもの

・通帳

・キャッシュカード

・金融機関、支店名、口座の種類、口座番号

 

■残高証明依頼書と併せて提出が必要な書類

・被相続人の死亡の事実が分かる戸籍謄本

・相続人代表の現在戸籍(被相続人との関係が分かるもの)

・委任状(代理人が請求する場合)

・印鑑証明書(代理人が請求する場合は代理人の印鑑証明書)

 

「残高証明書」の取り寄せにかかる期間は、小さい銀行だと即日出してくれることもありますし、都市銀行だと数週間かかる場合もあります。年金を郵便局で受け取っている方も多いですが、ゆうちょ銀行の場合「貯金事務センター」という場所で一括して処理を行っており1カ月程度かかることも少なくありません。

 

そして、JAバンクに複数口座をお持ちの方は少し注意が必要です。

というのも、私がファイナンシャルプランナーの仕事をはじめた頃、遺品整理でJAバンクの通帳がたくさんでてきて大変だった方のお話を聞きました。

ギフト商材の営業をしていたKさんは仕事の都合で全国各地のJAバンクに口座を持っていたそうですが、遺品整理で出てきた通帳の数は、なんと80冊以上!

通帳をみると最後の入出金から何十年も経過しているものや、数百円しか残っていない口座もありましたが、すべての残高を合計すると50万円ほどになったため、自宅から一番近いJAバンクへ電話で問い合わせをしたそうです。

そこで分かったのは、

・全国にあるJAバンクは「JAバンク/〇〇支店」という扱いではなく、それぞれ独立した金融機関だと思った方がよい

・多くの場合、口座開設店の窓口でしか手続きができない

ということでした。

 

となると、わずかな残高のために全国に散らばったJAバンクの各店舗へ手続き行脚をしなければならず

「交通費の方が高くつきますね・・・」

と、一部の手続きを断念したというお話でした。

 

当時わたしは年齢的にも相続について今ほど深く考えたことがなかったのですが、相続の知識というのは何千万円という節税対策も大事だけど、こういう実体験に基づいた身近な情報がもっと必要ではないかと感じ、発信する情報の方向性が変わるきっかけになりました。

もしこうなることを事前に知っていれば、銀行口座を必要最低限にまとめるなど、相続手続きをする人の負担を考えて自分の終活でやっておくべき具体的な行動がより明確になりますよね。

 

また、洗い出しから漏れやすいのが店舗を持たない「ネットバンク」など現物の通帳がない口座です。

■主なネット銀行

・楽天銀行

・住信SBIネット銀行

・GMOあおぞらネット銀行

・イオン銀行

・SBJ銀行

・ソニー銀行

・セブン銀行

・PayPay銀行

・auじぶん銀行など

 

「ネットバンク」は一般的な銀行より預金金利も高めで、インターネット上で残高確認や取引など24時間365日利用可能なので年々利用者が増えています。

しかし、通帳が発行されないため口座があるかどうか探す手掛かりがなく相続手続きにおいて遺産から漏れてしまう可能性も高くなります。

 

さらに、ネットバンクだけでなく一般の銀行でも紙の通帳から「デジタル通帳」への移行が進んでいますので注意が必要です。

例えば、みずほ銀行では2021年1月以降、三菱UFJ銀行では2022年4月以降に新設する口座で紙の通帳を発行する場合は手数料を徴収するようになりました。

ここ数年は新型コロナウイルス禍で『非対面サービス』の利用が急速に広がったことで、「デジタル通帳」以外にも現物を介さない「支払いや決済のキャッシュレス化」「脱ハンコ」など顧客に理解が得られやすかったとも考えられています。

数十年も経てば

「そういえば昔は紙の通帳があったね」

「お金っていろんな種類があったんだね」

と懐かしがっているかもしれませんね。

 

ネットバンク口座を利用していたかの確認方法としては、亡くなった方のパソコンやスマホをチェックすることが有効ですが、スマホやパソコンの使い方が分からないアナログ世代にはハードルが高い作業となりますので、ネットバンク口座についてはあらかじめその存在や手続き方法を家族に伝えておく方が安心です。

 

このように銀行口座の残高確認をするだけでも、書類の準備や作業に時間がかかり、手続き中に思わぬ障害が発生したります。

また、後になって多額の預貯金が判明すると遺産分割をやり直したり、かからないと思っていた相続税が発生する可能性もあります。相続税申告期限のギリギリになってから調査を始めていては相続税対策にも影響がでてしまいますから相続が発生したら出来るだけ早めに亡くなった方の相続開始時点での残高証明書の取得に取り掛かりましょう。

 

尚、相続における「残高証明書の請求」は名義人が亡くなられたことを金融機関に伝えることになりますので、この時点で口座は凍結されます。口座凍結についてはまた別のコラムでお伝えします。

 

次回は、「遺品整理で気づかれなかった預金はどうなってしまうのか」についてお伝えします。

 

(2023年12月18日時点の情報に基づいています)

2022/12/18